2022年1月10日
全米民生技術協会 (CTA) は1月8日までに、ラスベガスで1月3日~7日に開催した世界最大級の家電IT見本市「CES」の来場者が4万人超だったと発表した。
2年ぶりの対面開催だったが、新型コロナウイルスの新変異株「オミクロン株」の感染拡大の影響で約17万人が訪れた2020年の約1/4にとどまった。
CESはオンライン方式でも開催された。
1月8日まで開催される予定だった会期を1日短縮。
各国の渡航制限や、帰国後の隔離を考慮して出展を見送る国外企業が出たほか、アマゾン・コムやゼネラル・モーターズ (GM) など、米国の大企業でも現地への人員派遣を取りやめる動きが相次いだ。
今年の主役は、人や荷物の移動に関わるモビリティー (乗り物) や自動化の分野で、宇宙関連も話題となった。
GMはオンライン記者会見の場で、ピックアップトラック「シルバラード」の電気自動車 (EV) 版を発表。
同社のメアリー・バーラ最高経営責任者 (CEO) はオンライン会見を通して 「人や物の移動方法を変える技術やサービスを創造する」 と強調した。
ピックアップトラックは米自動車業界の主戦場で、EV専業大手テスラの対応が遅れる中、フォード・モーターなども攻勢をかけ、競争が激化している。
会場では、EV参入への本格検討を表明したソニーグループの展示ブースに大勢の来場者が詰めかけた。
吉田憲一郎・会長兼社長は 「未来に向けた大きな一歩だ」として、新会社 「ソニーモビリティ」 を今春に設立すると表明。
日本を代表する電機メーカーがEVに本格参入すれば、異業種企業を交えた競争が一段と激化する。
開発中のEVは 「VISION (ビジョン) - S」。
この日はスポーツタイプ多目的車 (SUV) 型の試作車も公開した。
吉田氏は会見で 「人工知能 (AI) やロボット技術を最大限活用し、モビリティーの可能性をさらに追求する」と述べた。
トラック向け自動運転技術のトゥシンプル・ホールディングス (米) や、自律走行して畑を耕したり除草したりする車両ロボットを手がけるナイオ・テクノロジーズ (仏) も注目の的。
2021年に民間の宇宙旅行への動きが加速したのを背景に、無重力体験サービスを手がけるゼロ・ジー (米) など宇宙関連企業を集めたエリアが新設された。
元宇宙飛行士が率いるシエラ・スペース (米) は単独で屋外に施設を設け、宇宙船の実物大模型を展示した。
日本国内の新興企業が開発する医療機器の出展も相次いだ。
世界有数の長寿国である日本で培われた高い技術力をアピール。
痛みを感じない検査機器など患者負担の軽減につながる装置などが注目を集めた。
医療機器開発を手がけるクォンタムオペレーション (東京都) は、発光ダイオード (LED) などの技術を活用した独自センサーで糖尿病患者の血糖値を測る腕時計型端末を展示。
検査時の採血が不要となり、患者は痛みを感じなくて済む。
大阪市の iDevice (アイデバイス) は、顔の形に合わせて変形する蛇腹構造の人工呼吸器用マスクを公開。
顔にかかる圧力は一般的なマスクの1/3程度で、皮膚への負荷を軽減する。
テムザック (京都市) は、医療教育の現場で子どもを治療する臨床実習機会が少ない点に着目し、小児患者型ロボットを開発した。
じたばたと暴れる動作などを再現し、押さえつけながら採血や心臓マッサージをする訓練などに活用する。
新興企業の出展は、日本貿易振興機構 (ジェトロ) が支援した。
ジェトロの島田英樹・スタートアップ支援課長は「健康は世界共通の課題で、関連事業はグローバル展開しやすい。
出展を通じて日本の技術が高い評価を得ることを期待する」と語った。
*Picture:© RYO Alexandre / shutterstock.com
(2022年2月1日号掲載)