Tuesday, 25 June 2024

半導体生産、シェア低下に焦り 対中国、中間選挙へ実績作りも


2022年1月27日

米議会下院が半導体産業への520億ドル (約5兆9,000億円) に上る巨額支出を盛り込んだ、国内産業の競争力を強化する法案を公表し、国を挙げての支援に動きだした。

450億ドル (約5兆1,500億円) は補助金支出や融資に充て、重要な製品の供給網強化や研究支援などを行う。

下院は法案の目的について「米国でより多くの製品を製造し、科学技術を伸ばすことで、経済や国家安全保障を強化する」と説明。


バイデン大統領は法案公表を受け「今後数十年にわたって中国や他国に対抗するために、重要な一歩を踏み出した」と歓迎。

「法案は製造業の雇用を取り戻し、半導体などの供給制約の緩和に重点を置いたものだ」との声明も発表した。

与党民主党のナンシー・ペロシ下院議長は声明で「上院と協議し、(成立に向け) できるだけ早く大統領の机に法案を届けることを期待している」とし、早期の可決を目指す考えを示した。


かつては米国の基幹産業だった半導体産業も、近年では国内生産が減少。

世界市場での米企業のシェア低下も著しく、衰退への焦りとも取れる。

先端産業で中国企業の後塵を拝する状況も増える中、バイデン大統領は米経済の競争力維持に国の威信をかける。

11月の中間選挙を控え、実績作りを急ぎたいとの思惑も透ける。


アジア台頭


半導体は自動車や携帯電話など生活必需品から軍事まで幅広く使われているが、新型コロナウイルス禍からの経済活動再開による需要急増で世界的に不足

半導体を使った製品の生産が滞り、歴史的な物価高の原因となっている。


米半導体工業会によると、米国の半導体生産のシェアは1990年の37%から足元では12%まで低下した。

政府の研究開発投資も伸び悩み、企業が生産拠点を海外に移しただけでなく、アジアの企業の台頭を許した。


中国は「中国製造 2025」を掲げ、半導体などの先端技術開発に血道を上げている。

バイデン氏は1月21日の演説で「中国は世界の市場を制するために全力を挙げている」と危機感を示した。


企業は政府の取り組みを好機と捉えている。

米半導体大手インテルは10年間で最大1,000億ドルを投じ、オハイオ州に世界最大級の半導体製造工場を建設する計画を発表。

パット・ゲルシンガー最高経営責任者 (CEO) は政府の意向に沿うかのように「より強靱な供給網を構築し、将来にわたる半導体の確保につなげる」と強調した。


好材料

半導体への投資は、バイデン政権の経済政策の中でも重要性を増している。

政権は昨年、目玉政策を盛り込んだ大型歳出法案の成立を目指したが、与野党の勢力が拮抗する上院で与党議員の「反乱」に遭い、成立は見通せていない。

新規雇用も見込める半導体への大規模な投資を実現すれば、支持率が低迷するバイデン氏にとって中間選挙に向けた好材料となる。

バイデン氏は声明で「議会の超党派の取り組みに勇気づけられた」と、議会の早期可決に期待感を示した。



(2022年2月16日号掲載)