難しい翻訳、記事訂正も
天皇の影響力、どう報道
2019年5月5日
天皇の代替わりをどう伝えるか。
海外メディアも頭を悩ませたようだ。
日本在住計17年のウォールストリート・ジャーナル (WSJ) 紙のピーター・ランダース東京支局長 (50) に共同通信が聞いた。
Q:一連の報道を振り返って。
A : 「私は記者として日本で長く働き、日本に詳しいと自負してきた。
それでも、改元や退位に関する盛り上がりの中で、知識不足や誤解がかなりあったと気付かされた。
元号を海外に向けて説明するだけでも大変だ。
新元号 『令和』が万葉集からどう引用されたのかについて、記事の訂正も出してしまった」
「今は 『あの建物は昭和だ』とか 『昭和を感じる』 と言っているが、『平成はどんな時代だった』 と話す日が来ると思うと面白い」
Q:日本の皇室を伝える難しさは。
A : 「象徴天皇に政治の実権はないが、影響力が全くないかと言われれば、それは違うと考えている。
(上皇ご夫妻は) 沖縄を11回訪れ、高齢になってからも太平洋戦争の激戦地を訪問した。
政治的な意味合いが全くないとは言い切れないと思う。
だが、具体的にどんな影響があるのかは、受け止め方によって異なるだけに悩ましい」
Q:海外メディアは「令和」 の翻訳に苦労したようだが。
A : 「漢字の意味だけを調べても、出典の文脈を調べなければ、正しく捉えられない。
日本語を少し知っている外国人は、命令の『令』がまず頭に浮かび、威圧的なニュアンスを感じた人もいたと思う。
私も発表直後、日本人の同僚記者から『令には良いという意味がある』と聞かされたが『もっと調べて!』と言ってしまったぐらいだ」
Q:読者の反響は。
A : 「例えば儀式で用いられる三種の神器のように、日本特有のものへの関心は特に高いと感じる。
また米国で育ち、ハーバード大を卒業した元外交官の皇后さまに興味を持っている人も多い。
米国の大統領夫人、ファーストレディーはさまざまなテーマを持って活動する。
制度は違うが、皇后さまがこれまでの経験を生かし、どのような分野で活躍するのかにも期待が集まっている」
××××× *ピーター・ランダース氏:1969年5月、ニューヨーク出身。
エール大卒業後、AP通信東京支局記者などを経てウォールストリート・ジャーナル 紙へ。
東京特派員やワシントン支局次長を務め、2014年2月からWSJ東京支局長。
(2019年5月16日号掲載)