2023年11月17日
新経済圏構想「インド太平洋経済枠組み (IPEF)」交渉に参加する日本や米国など14か国は11月16日、サンフランシスコで首脳会合を開いた。
終了後、首脳声明を発表し、妥結を先送りした貿易を除く3分野で決着するなど「記録的な速さで目標を達成した」と会合の意義を強調。
昨年9月の交渉入りから約1年で、初めてまとまった形での成果となった。
覇権を強める中国へ対抗する狙いがあり、中国への依存度を減らし、IPEF域内の競争力を高めることを念頭に、重要鉱物に関する対話枠組みを創設することも示した。
声明は脱炭素化などの妥結が「今後も前進し続けるための基盤を築いた」とし、来年から毎年閣僚級会合、隔年に首脳会合を開くことも明記した。
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IPEFは環太平洋連携協定 (TPP) の代替策としてバイデン政権が主導。
関税引き下げは議題に含めず、「貿易」や「供給網」強化、脱炭素化を推進する「クリーン経済」、税逃れ防止を含む「公正な経済」の4分野を柱として交渉を進めてきた。
このうち3分野で妥結に至り、大きな節目を迎えた。
首脳会合で、岸田文雄首相は「大きな進展をみたことを歓迎する」と述べた。
より意義のあるものにするためには「全参加国の積極的な関与が不可欠だ」とも強調した。
バイデン大統領は「共により良い未来を切り開いていく」と、交渉成果への手応えを語った。
新たな加盟も歓迎するとの考えも示した。
IPEFをめぐっては昨年5月に発足会合を東京都内で開催。
9月に交渉入りを決めた。
今年5月には供給網強化の協定締結で妥結。
11月13~14日にサンフランシスコで開いた閣僚会合で、クリーン経済や公正な経済の2分野でも実質妥結に漕 (こ) ぎ着けた。
米政府は16日、今回妥結できなかった貿易分野について「引き続き努力する」との声明を発表した。
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アジア太平洋経済協力会議 (APEC) 首脳会議も11月16日、本格的な討議を開始。
計3日間の日程で、バイデン氏が議長を務め、岸田氏、中国の習近平国家主席らが出席。
岸田氏は、自由で開かれた貿易や経済のデジタル化の推進といった日本の立場を発信した。
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貿易先送りには失望、マシュー・グッドマン氏
▪︎ 米シンクタンク、外交問題評議会のマシュー・グッドマン氏の話:インド太平洋経済枠組み (IPEF) で交渉されてきた4分野のうち、貿易を先送りする結果は、インド太平洋地域や (通商政策に注目する) 米ワシントンの人々を失望させるものだった。この地域への米国の経済的な関わりに疑念を抱かせている。ただ、楽観的な見方をすれば、協議は継続され、来年には何かを引き出せるかもしれない。実質的に妥結した他の分野ではいくつもの有益な成果を含んでいる。
(2023年12月1日号掲載)