2023年11月17日
パレスチナ自治区ガザ最大のシファ病院に突入したイスラエル軍は、イスラム組織ハマスの武器を発見したと発表した。
病院をハマスの軍事拠点だと主張していたが、公開した映像では数は少なく、同国メディアからも「期待外れ」との指摘が出る。
ただ、イスラエル軍は見つかったのは「氷山の一角」だとし、主張は揺らがない。
同盟国の米国の支持を受け、中枢の司令部があるとみる地下トンネル網の攻略を急ぐ。
▽プロパガンダ
「ハマスが国際法に違反して、組織的に病院を軍事利用していたと確認した。疑う余地はない」。
イスラエル軍は11月15日夜、病院のMRI病棟内部を撮影した映像を公開し、イスラエル国防軍のジョナサン・コンリカス報道官がハマスのものとされる武器を誇らしげに紹介した。
自動小銃AK47や弾薬、戦闘服が入ったバッグがMRI装置の裏に隠してあったと説明。
同様のバッグが病棟で計3つ見つかり、全ての監視カメラに目張りが施されていたという。
イスラエル軍のダニエル・ハガリ報道官は記者会見で、通信機器を備えた作戦指揮所も発見したと主張した。
成果を強調する軍には疑念の声も上がった。
イスラエルの英字紙エルサレム・ポストは「18時間以上捜索したのに、ハマスの存在を示す証拠としては期待をはるかに下回る。戦闘員は蒸発したのか」と論じた。
同国のラジオも「イスラエル軍はまだ人質がいたとの痕跡を見つけていない」と批判した。
ハマスは映像を「安っぽいプロパガンダだ」と一蹴。
パレスチナの人権活動家ムスタファ・バルグーティ氏も、病院がハマスの拠点だったかどうかは「国際的な第三者委員会の調査」に委ねるべきで、イスラエル側の主張は一方的だと批判した。
▽全面支持
これに対し、米国はイスラエルを全面的に支持する。
「病院の地下に司令部があり、ハマスの武器や資材があるのは確かだ」。
バイデン大統領は15日、サンフランシスコ近郊で開かれた米中首脳会談後の記者会見で、イスラエル軍によるシファ病院突入について質問され、こう強調した。
国家安全保障会議 (NSC) のジョン・カービー戦略広報調整官も、ハマスが病院を軍事利用しているとの米国独自の分析に「大いに自信がある」と断言した。
ただ、ハマスは地下にトンネル網を張り巡らせており、全長数百キロ、深さは最大80メートルといわれる。
イスラエル軍は特殊工兵部隊を投入しているが、トンネルはハマスの根城。
人質が拘束されている可能性があり、攻略は難航必至とみられている。
ガザ病院でトンネル発見、イスラエル軍攻撃正当化
パレスチナ自治区ガザに地上侵攻するイスラエル軍は11月16日夜、北部ガザ市にある地区最大のシファ病院の捜索で、トンネルの縦穴と武器を多数積んだ車両1台を発見したと発表した。
イスラエル軍は病院の地下にイスラム組織ハマス中枢の司令部があるとしており、攻撃の正当性を強調した。
イスラエルのヨアブ・ガラント国防相は16日、ガザ市西部地域の制圧を表明。
軍は南部の住民にも避難を要求しており、南部にも侵攻する構えを見せている。
病院攻撃は国際人道法違反との批判が高まる中、イスラエルは地下トンネルが存在する証拠提示を迫られている。
ハマスは病院の軍事利用を否定。
指導者ハニヤ氏は16日「でっち上げの嘘 (うそ) に基づく攻撃」と非難した。
*Picture: © Anas-Mohammed / shutterstock.com
(2023年12月1日号掲載)