9/23/2023
全米自動車労働組合 (UAW) は9月下旬、賃上げなど待遇改善をめぐる労使交渉に進展がないとして、ストライキを拡大した (*写真)。
車産業の本拠、ミシガン州にはバイデン大統領とトランプ前大統領が訪問を予定。
組合員への連帯を示すとみられ、来年に迫る大統領選の前哨戦の様相を呈している。
一方で、今後もストが拡大すれば、車の生産や米経済全体への影響が懸念される。
ストの背景には、民主党のバイデン氏が推進する電気自動車 (EV) の普及でガソリン車よりも部品数が減り、将来的に雇用が脅かされることへの危機感もある。
大統領選の共和党候補指名争いで首位を走るトランプ氏はバイデン氏の支持層の切り崩しを図るとみられる。
UAWは9月15日から米自動車大手ゼネラル・モーターズ (GM) と旧米クライスラーを傘下に持つ欧州ステランティスのほか、米フォード・モーターの「ビッグスリー」の計3工場でストを実施。
今回はGM、ステランティスの計38か所の部品配送センターにもストを広げた。
フォードとの交渉では進展があったとして、今回の拡大には含めなかった。
3社の組合員は計約15万人。
これまでの3工場のストでは約13,000人が参加しており、ロイター通信によると、対象が部品配送センターに拡大することでスト参加者が約5,600人増える。
バイデン氏は労組寄りの発言を繰り返しており、大統領選に向け支持を取り付けたい考えだ。
ミシガン州はかつては民主党の地盤だったが、2016年大統領選でトランプ氏が制して勝利につなげた。
2020年はバイデン氏が奪還した。
米自動車スト、収拾見えず 交渉進展なく拡大へ
9月に自動車大手大手3社の一部工場で始まったUAWのストは次第に対象を広げていった。
一斉ストライキに踏み切ってから2週間が経過しても交渉は難航し、収拾の糸口は見えなかった。
9月下旬にはGMとフォードに対するスト対象拡大を決めた。
UAWは4年に一度、企業側と労働協約の改定交渉に臨んでおり、今回の改定では4年間で賃金を40%引き上げることや、給与体系の格差の撤廃など大幅な待遇改善を要求。
企業側も歩み寄りを見せたが、期限までに折り合えず、初の3社同時ストに突入した。
9月22日には交渉で一定の進展を見せたフォードを除く、GMとステランティスの計38か所の部品配送センターにも対象を広げた。
これまでに3社の組合員約15万人のうち、6,000人ほど増えて、結果的に約19,000人がストに参加した。
ブルームバーグ通信は、関係者の話として、UAW側が最低30%の賃上げならストから脱する可能性を伝えたが、合意できるかどうかは不透明のままだった。
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▪︎全米自動車労働組合 (UAW):1935年に創設された北米自動車業界を代表する労働組合で、ミシガン州デトロイトに本部を置く。
ゼネラル・モーターズ、フォード・モーター、欧州ステランティスの自動車大手3社と4年ごとに労働協約をめぐり労使交渉を行っている。
組合員は過去に合流した航空、農業分野の労働者を含めると米国・カナダなどで40万人以上に上る。
退職組合員は58万人以上とされる。
自動車3社の組合員は約15万人。
*Picture:© Jon Rehg / shutterstock.com