2024年1月1日
今年の大統領選で返り咲きを狙うトランプ前大統領の刑事、民事訴訟で、連邦最高裁の判断が焦点となっている。
州予備選の出馬資格の有無や、議会襲撃事件での大統領免責特権適用の是非に関する判断が示されれば、選挙戦を左右する可能性がある。
1月15日に開かれる共和党候補指名争いの初戦、アイオワ州党員集会まで2週間余り。
政策論争は低調で、支持率で独走するトランプ氏の法廷闘争に注目が集まる異例の事態となって
いる。
トランプ氏は2020年大統領選の敗北を覆そうと画策し、支持者を煽 (あお) って2021年の議会襲撃を引き起こしたとして起訴された。
コロラド州最高裁は12月19日、反乱に加わった者は官職に就けないと規定する憲法修正第14条第3項が適用されるとして、トランプ氏は州予備選に出馬できないと判断した。
「私は反乱者ではない! ペテン師のバイデンこそが反乱者だ」。
トランプ氏は1月21日、反乱に関与したとの判断は間違いだと自身のソーシャルメディアで訴えた。
徹底抗戦の姿勢を示し、支持率はさらに上昇した。
メイン州のシーナ・ベローズ州務長官 (民主党) も12月28日、同様の理由で同州予備選の出馬資格剝奪を発表した。
ベローズ氏は「トランプ氏は選挙に不正があったとの虚偽の主張で支持者を焚 (た) き付けた」と結論づけた。
トランプ氏陣営は声明で「選挙を盗み、米国の有権者の権利を奪おうとしている」と反論。
今回の措置には共和党だけでなく民主党からも疑問視する声が上がり、メイン州選出のジャード・ゴールデン下院議員 (民主党) は声明で「米国は法治国家であり、有罪になるまでは投票用紙に残すべきだ」と指摘した。
トランプ氏の立候補資格剝奪を求めた他の訴訟では、ミネソタ州最高裁とミシガン州最高裁が請求を棄却。
コロラド、メイン両州の判断の是非は、最終的に連邦最高裁に委ねられるとみられる。
議会襲撃事件を担当するジャック・スミス特別検察官は連邦最高裁に対し、大統領の免責特権適用の是非に関する審理を急ぐよう重ねて要求したが、連邦最高裁は高裁の審理を待って判断する方針だ。
3月4日にワシントンDCの連邦地裁で予定される初公判を前に、駆け引きが激化している。
トランプ氏は在任中、連邦最高裁に保守派判事3人を送り込んでおり、自身に有利な判断を示すことを期待しているようだ。
▪︎アメリカ合衆国憲法修正第14条第3項 [条文]:連邦議会の議員、合衆国の公務員、州議会の議員、または州執行部もしくは司法部の官職にある者として、合衆国憲法を支持する旨の宣誓をしながら、その後、合衆国に対する暴動または反乱に加わり、または合衆国の敵に援助もしくは便宜を与えた者は、連邦議会の上院および下院の議員、大統領および副大統領の選挙人、文官、武官を問わず、合衆国または各州の官職に就くことはできない。*但し、連邦議会は各々の院の2/3の投票によって、かかる資格障害を除去することができる。
*Picture:© spatuletail / shutterstock.com
(2024年1月16日号掲載)