Tuesday, 25 June 2024

ネットフリックス社、ドラマ版『ONE PIECE』好調  「歴史を塗り替える」 ・・・ 識者「実写化」転機と予測

10/15/2023
9/17/2023

全世界累計発行部数が5億部を超える、日本を代表する漫画の実写版として注目された米配信大手ネットフリックスのドラマシリーズ『ONE PIECE』。

8月末の配信後、視聴時間を反映する週間グローバルランキング (英語シリーズ) で首位を獲得し、日本を含む世界93の国・地域でトップ10入りを果たした。

識者は「良い意味で予想を裏切られた」と評価。

好調の理由を探った。


原作者と緊密に


全8話の構成で、伝説の海賊王が残した大秘宝を求め、主人公ルフィが海賊王を目指し、仲間とともに旅に出る海洋冒険譚の序盤を描く。

アニメジャーナリストの数土直志 (すど・ただし) は「話ごとにヤマ場があり、初見でも世界観やキャラクターが理解しやすい、ハリウッド流の脚本術の成果が出ている」と太鼓判を押す。


撮影は南アフリカを中心に行われ、製作総指揮には原作者の尾田栄一郎も名を連ねる。

米制作会社「トゥモロースタジオ」も交え、「ファンとの信頼関係があるからウソをつけない」 (尾田)、「実写化の歴史を塗り替えたい」 (ネットフリックス社) との思いの下、緊密な連携と対話を重ねながらの制作期間は約7年に及んだ。


根本が忠実


真っ直ぐで仲間思いのルフィ役には、漫画そのままの陽気な親近感をまとうメキシコ俳優イニャキ・ゴドイを抜擢 (てき)。

高いアクション性が問われる剣士ゾロ役には日本の新田真剣佑 (あらた・まっけんゆう) が挑み、三刀流の必殺技「三千世界」など複雑な剣捌 (さば) きも披露した。

キャスト陣について「ビジュアルだけなら、必ずしも似ているわけではない」と数土。

「原作通りと感じさせるのは、根本的にキャラクターの行動や振る舞いが原作に忠実だから」と解説する。


ネットフリックス社も「完全再現は不可能なので、この漫画のDNAを捉えたい」と、多額の制作費を投入した豪華なセットだけでなく、3Dスキャンを活用した特殊メークで表現したキャラクターなど、陳腐に映らないリアリティーさを探ったという。

吹き替え版では、メインキャストにアニメ版の声を担当してきた声優陣を起用し、従来のファン層にも親近感を抱かせる仕掛けをつくった。


実写化の転機


漫画・アニメの実写化の歴史はホロ苦い。

同じく大人気漫画『ドラゴンボール』を実写化した米映画は原作と大きく異なるビジュアルなどがファンの不興を買った。

ネットフリックス社も過去の実写版の不評を「教訓にした」という。


数土は今作の成功が「グローバル向けの日本漫画・アニメの実写化の弾みになる」と“転機”を予測。

ファンが続編に関心を示す中、シーズン1の配信開始から約2週間で、早くもシーズン2の制作が発表された。



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ネットフリックス:1997年に設立された米国のインターネット動画配信大手。

カリフォルニア州ロスガトスに本社を置く。

2007年に動画配信を開始し、日本には2015年に進出した。

30以上の言語に対応し、190以上の国・地域で展開している。

定額制で多くの映画やテレビ番組を見放題にするサービスが受け、有料会員数は伸び続けている。

近年は自社での独自作品の制作に力を入れており、映画や番組は米アカデミー賞やエミー賞も受賞した。



*Picture:©  zefrynovizar /shutterstock.com