2022年12月11日
半導体の対中輸出規制をめぐり、バイデン政権が日本政府に対して協力を直接要請したことが12月10日に分かった。
ジーナ・レモンド米商務長官が9日に西村康稔経済産業相と電話会談し「対中戦略を共有する同盟国として応じてほしい」と求めた。
複数の関係者が明らかにした。
日本が高い技術を持つ半導体製造装置などの輸出を規制して、中国の先端半導体の開発を遅らせる狙い。
閣僚間での直接的な協力要請は初めてとみられる。
日米を含む複数国が国際協定に基づき、参加する規制枠組み構想などが浮上する。
ただ、日本が中国を名指しした規制に加われば中国の反発は避けられず、具体的な政策協調は難航する可能性もある。
米国は10月に安全保障の観点から、スーパーコンピューターや人工知能 (AI) 向けの高性能品の対中輸出を幅広く制限する規制案を発表していた。
日本は米中対立の中で中国側との関係も保ってきた。
米国の要請の背景には、半導体の回路線幅の微細化技術などで世界トップレベルの企業がある日本やオランダの協力を得られなければ、規制の抜け穴ができるとの危機感がある。
レモンド氏は会談で安全保障を挙げて幅広い協力を求めたもようだ。
11月には米メディアに「日本とオランダも (米国の規制に) 従うだろう」と述べていた。
多国間枠組みは現在も似た仕組みはあるが、ロシアが参加しているなどして機能不全状態にあるという。
これに関連し、ブルームバーグ通信はオランダ政府が米国の要請を受けて対中半導体規制の検討に入ったと報道。
一定水準の半導体を製造する装置の輸出規制を念頭に置いている。
半導体製造装置では米国企業のほか、オランダのASML、東京エレクトロンなどが売上高で世界の上位を占める。
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先端半導体「米がリード」 、バイデン氏 TSMC視察
12/8/2022
バイデン大統領は12月6日、半導体受託生産の世界最大手である台湾積体電路製造(TSMC) がアリゾナ州フェニックスに建設中の新工場を視察した。
建設を祝う式典で、TSMCによる先端半導体の製造拠点の新設が「同州で史上最大の海外投資だ」と歓迎し、アジア依存を減らし自国生産を拡大する考えを表明した。
「米国は世界経済をリードする上で、他国よりも有利な立場にある」と競争力強化に向けて自信を示した。
TSMCは式典に先立ち、アリゾナ州での投資総額を従来計画の3倍以上となる400億ドル (約5兆5,000億円) に引き上げると発表。
2024年に回路線幅4ナノメートル (ナノは10億分の1) の先端半導体の生産を開始する予定の新工場に加え、さらに性能の高い3ナノメートル型の工場も設け、2026年から生産する。
2つの工場で年間100億ドル (約1兆3,660億円) 規模の売上高を見込む。
式典にはTSMC創業者の張忠謀 (モリス・チャン) 氏や、アップルのティム・クック最高経営責任者 (CEO) らも参加。
米国では半導体産業への補助金を盛り込んだ法律が8月に成立し、投資拡大の決定が相次いでいる。
(2023年1月1日号掲載)