2022年10月30日
サンフランシスコにあるナンシー・ペロシ下院議長 (82) の自宅に10月28日未明、男が押し入り、夫ポール氏 (82) を襲撃した。
警察は殺人未遂などの容疑で男を逮捕し、計画的犯行だと明らかにした。
米メディアによると、ペロシ氏は不在で、男は「ナンシーはどこだ!」と叫んでいた。ペロシ氏が標的だった可能性がある。
ポール氏は頭蓋骨を折る重傷を負った。
民主党のペロシ氏は共和党のトランプ前大統領と激しく対立。
昨年1月のトランプ氏支持者らによる議会襲撃で標的の一人となった。
下院議長は大統領権限の継承順位が副大統領に次いで2位の要職。
11月8日の中間選挙を前に、米国の民主主義が政治的動機による暴力に脅かされる異例の事態となっている。
男はデービッド・デパピ容疑者 (42)。
警察官が同日午前2時半頃にペロシ氏宅に駆けつけると、容疑者がハンマーでポール氏を殴打した。
容疑者も負傷し、病院に運ばれた。
ペロシ氏はワシントンにいて無事だった。
米メディアによると、容疑者はトランプ氏の支持者とみられ、同氏が敗北した2020年大統領選は不正だったとする主張を擁護するような情報をフェイスブックに投稿していた。
ポール氏は容疑者が自宅に侵入後、警察に通報。
容疑者に気付かれないように通話状態を保ち、状況を知らせていた。
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米国民を苦しめるインフレへの対策が不十分だと批判され、守勢に回る民主党は、民主主義を守り抜く重要性を強調。
トランプ氏や同氏を支持する議員の過激な発言が暴力を助長し、共和党はそれを受け入れていると批判を強め、巻き返しを図る。
バイデン大統領は襲撃を「卑劣だ。政治的な暴力はもうたくさんだ」と非難し、演説で「政治に対する暴力に立ち向かう必要がある」と指摘。
ハリス副大統領は政敵への中傷を続けるトランプ氏を念頭に「指導者を自称する者は自分の言葉の影響を理解しなければならない」と記者団に語った。
ロイター通信によると、議会警察の警護対象への脅迫行為は2021年で約9,600件に上り、トランプ氏が大統領に就任した2017年から約3倍に増えた。
議員は警護対象だが、離れて暮らす家族は対象外のため、議員から不満の声も上がる。
民主党のカレン・バス下院議員は「身の安全に不安を感じる。米国の民主主義がいかに脆 (もろ) いかを示した」と述べ、トランプ氏の政治手法を問題視した。
自身も9月に自宅の窃盗被害に遭ったという。
議会襲撃でのトランプ氏の責任を追及している共和党のアダム・キンジンガー下院議員は、子どもを殺害するとの脅迫を受けたと明らかにした。
*Picture: © lev radin / shutterstock.com
(2022年11月16日号掲載)