2024年6月17日
スウェーデンのストックホルム国際平和研究所 (SIPRI/本拠地:ソルナ) は6月17日、2024年1月時点で中国が保有する核弾頭数は昨年同月から90発増え、推計500発になったと発表した。
うち24発が実戦配備済みと見込んだ。
「どの国よりも核戦力を速く拡大させている」と指摘。
世界の核弾頭総数 (推計) は12,121発と昨年から微減したが、核兵器開発は進み「各国が核抑止力への依存を深めている」と懸念を
示した。
中国について、これまで核弾頭を別に保管していたとみられてきたが、固体燃料型ミサイルをサイロ (地下発射施設) に格納する
などの動きを見せていることから「恐らく少数の核弾頭を配備し始めている」と分析。
将来的には、運搬手段の大陸間弾道ミサイル (ICBM) を核大国の米国やロシアに匹敵するほど多数配備する可能性もあるとした。
実戦配備済みは米国、ロシア、英国、フランスの4か国で、中国が加われば5か国目となる。
「中国の核兵器保有は今後10年増え続ける」と推計した。
北朝鮮は20発増え、推計約50発になった。
核弾頭最大90発分の核分裂性物質を保有しているとみられ、核弾頭数は今後も増加すると予想される。
SIPRは「北朝鮮は他国と同様、戦術核兵器の開発に重点を置きつつある」と分析。
北朝鮮が紛争の初期段階で核を使う危険性もあり得ると警鐘を鳴らした。
ロシアは5,580発、米国は5,044発で、両国で世界の 9割近くを占める。
米ロが古い核弾頭を解体したことなどで世界全体の総数は減ったが、運用可能な核弾頭に限れば9,585発となり9発増えた。
実戦用に配備された核弾頭は世界で60発増えて3,904発になった。
うちロシアが1,710発、米国は1,770発。
ダン・スミス所長は「我々は人類史上、最も危険な時期の一つにいる。大国は一歩引いて考えるべき時だ」と訴えた。
国際非政府組織 (INGO)、核兵器廃絶国際キャンペーン (ICAN/本拠地:スイス・ジュネーブ) は6月17日、核兵器保有9か国による2023年の核兵器関連支出が前年比13.4%増の 914億ドル (約14兆3,800億円) に上ったとの推計を発表した。
増加幅も拡大。
全ての国に対し、核兵器を全面的に違法化した核兵器禁止条約に参加するよう訴えた。
最大支出国は米国で、全体の過半を占める515億ドル。
弾道ミサイルを搭載する原子力潜水艦の入れ替えなどを含む核兵器関連の最新鋭化を進めており、前年比17.8%増と9か国の中で最も高い伸び率を示した。
中国119億ドル、ロシア83億ドル、英国81億ドル、フランス61億ドルと続き、国連安全保障理事会の常任理事国5か国が上位を占めた。
インドが27億ドル、イスラエルは11億ドルで、パレスチナ自治区ガザでの軍事作戦により軍事費は急増したが、核兵器関連はあまり影響を受けていないと分析した。
パキスタンが10億ドルで、北朝鮮は公開情報が極めて少ないとしながらも8億5,600万ドルと見積もった。
ICANは、米ハネウェル・インターナショナルや米ノースロップ・グラマンなど20社が2023年に、核兵器の開発・管理で少なくとも310億ドルの収益を得たと指摘。
同年の新規契約は79億ドルを超えたとみている。
これらの企業は米仏両政府に対するロビー活動に計1億1,800万ドルを費やした。
英政府高官と40回以上会談した企業もあり、政府やシンクタンク、金融機関に影響力を行使していると強調した。
(2024年7月1日号掲載)