2023年9月17日
大リーグ、エンゼルスの大谷翔平 (おおたに・しょうへい/29) は、10月1日のレギュラーシーズン最終戦まで残り2週間となったところで、6年目の戦いに幕を下ろした。
投手では右肘靱帯 (じんたい) を損傷し、打者では右脇腹が癒えず「二刀流」は満身創痍 (そうい) に――。
8月9日の取材対応を最後に、言葉を残さず「終戦」となった大谷は2度目の右肘手術に踏み切るのか、激動のオフを迎える。
笑顔
今季終了が発表された9月16日の本拠地でのタイガース戦。
大谷は9月4日に右脇腹を痛めてから、初めて試合中のベンチに姿を見せた。
若手に笑顔で積極的に話かけ、中心選手であることを印象づけた。
ネビン監督は「若手選手が多い中、ベンチにいてくれるだけで大事な存在」と目を細めた。
二刀流はさらなる進化を遂げ、記憶にも記録にも残る1年だった。
日本を3大会ぶりの世界一に導いたワールド・ベースボール・クラシック (WBC) では米国との決勝で、
エンゼルスの同僚トラウトから空振り三振を奪って胴上げ投手になった。
シーズンに入っても投打の切れ味は抜群で、8月9日にメジャー史上初の「10勝/40本塁打」を記録。
FOXテレビでリポーターを務めるベン・バーランダー氏は「大谷は二刀流で野球の景色を変えた」と功績を称賛した。
だが、休みなく戦ってきた代償は大きく、2018年に手術を受けた右肘を再び痛めた。
手術の可能性
今後も投手で不安なく力を出すには、2度目の手術に踏み切る可能性は高い。
ミナシアン・ゼネラルマネジャーも9月16日、「手術を含めた医療措置をできるだけ早い時期に受ける」と説明した。
右肘にメスを入れれば投手復帰には1年以上のリハビリが必要で、打者復帰にも半年程度は要する。
手術となれば2024年は打者に専念、二刀流での復帰は2025年となるシナリオが現実的だ。
オフには全30球団と移籍先を交渉できるフリーエージェント (FA) になる。
二刀流での未来が不透明になる手術を受けても大型契約を結べるのかどうか、米メディアでも意見は二分する。
代理人のネズ・バレロ氏は9月4日の会見で「彼は投げることが好きだ。二刀流で戻ってくることに疑問の余地はない」と述べ、投打継続を優先することを明言した。
逃げ切りで初本塁打王確実、2年ぶりMVPも濃厚
大リーグのレギュラーシーズンは最終盤を迎えた。
ア・リーグで大谷の成績は抜きん出ており、日本選手初の本塁打王獲得と2年ぶりの最優秀選手 (MVP) 選出は濃厚だ。
リーグ最多の44本塁打を記録する大谷を、2位ロベルト (ホワイトソックス) が35本 (9月20日現在) で追うが、差は縮まっていない。
34本 (9月20日現在) で3位のガルシア (レンジャーズ) も右膝痛で負傷者リスト (IL) に入ったままで、戦列を離れている。
昨季ア・リーグ新記録の62本を放ったジャッジ (ヤンキース) は故障から復帰以降、ディバース (レッドソックス) と並ぶ32本まで伸ばしたが、最近は失速気味。
大谷がリードを保ったまま逃げ切りそうだ。
投手でも10勝、防御率3.14と好成績を残す大谷は投打「二刀流」の活躍から、MVPも当確との見方だ。
唯一のライバルは打率首位で31本塁打のシーガーだが、同選手が所属するレンジャーズのボウチー監督は米メディアに「正直に言うと (シーガーのMVPは) 恐らくないね。大谷がいるから」と白旗を揚げている。
*Picture:© Conor P. Fitzgerald / shutterstock.com
(2023年10月1日号掲載)