2021年10月16日
連邦上院の与野党議員は10月14日、グーグルやアップルなど「GAFA」と呼ばれる巨大IT企業への規制を強める反トラスト法 (独占禁止法) 改正案を提出すると発表した。
大規模なプラットフォームを展開する巨大IT企業が、自社サービスを優遇することを禁じる。
規制論議を主導する民主党のエイミー・クロブシャー上院議員らが発表した。
下院司法委員会は6月に類似の法案を可決しており、上院が足並みを揃えることで法規制の動きが加速しそうだ。
法案は検索結果で特定IT企業や製品が目立つようにしたり、プラットフォームを利用する企業に自社製品の購入を要求したりする偏りのある運営をやめさせる。
独禁当局には違法行為を防ぐため、より大きな権限を与える。
クロブシャー氏は上院司法委で反トラスト小委の委員長を務める。
声明で「米国の繁栄は開かれた市場と公正な競争の上に築かれていたが、今は独占問題に直面している」と強調。
消費者や競争環境を守るための法整備が必要だと訴えた。
米議会では下院の反トラスト小委員会が昨年10月、巨大IT企業の事業分割などを含めた規制強化を提言した。
IT規制は対立が目立つ議会で、与野党が一致点を見出せる数少ない分野になっており、バイデン政権下で法制化に向けた動きが活発化している。
上院の与野党議員による巨大IT規制法案に対して、アマゾン・コムやフェイスブックが支援する業界団体「進歩会議所」は10月14日、消費者のためにならないと猛反発、成立阻止へ圧力を強める。
進歩会議所は「アマゾンが自社ブランド商品の販売をやめ、グーグルマップを検索結果から排除しても、インターネットはより良いものにならない」と訴えた。
グーグルなどが加盟するコンピューター通信産業協会 (CCIA) も「米国のリーダー的地位を海外のライバルに譲り渡す危険性のある法案だ。
イノベーションの未来を決めるのは市場であるべきだ」とコメントした。
巨大ITは議会へのロビー活動を積極的に展開しており、影響力は大きい。
米経済の成長を牽 (けん) 引するIT産業への規制強化に慎重な声もあり、法案成立に向けた道筋は不透明だ。
一方、バイデン政権は巨大化したIT産業が不公正な競争や富の寡占を生んでいると問題視。
米連邦取引委員会 (FTC) の委員長にはアマゾンの市場支配に警鐘を鳴らしてきたリナ・カーン氏を抜擢 (ばってき) し、競争政策を担当する大統領特別補佐官に巨大IT解体論者のティモシー・ウー氏を起用した。
さらに、司法省で独占禁止法を担当する司法次官補には、規制論者で知られる著名弁護士のジョナサン・カンター氏を指名。
GAFAに厳しい姿勢を取る与党民主党のエリザベス・ウォーレン上院議員は「戦いのリーダー」の指名だとし、手放しで歓迎した。
(2021年11月1日号掲載)