Saturday, 22 February 2025

忌み嫌われた “最高の銃”「AR15型ライフル」 軽い引き金、重い責任・・持つ権利 vs 生きる権利

2023年2月20日

引き金は軽かった。

「バーン」という銃声は周囲の林に吸い込まれ、反動はあまり感じない。

東部ペンシルベニア州で「AR15型ライフル」を試射した。

米国で高い性能と手軽さから最も親しまれる一方、乱射事件で多くの犠牲者を出して忌み嫌われた銃だ。

射撃場の総責任者は「銃を持つ権利には重い責任が伴う」と強調した。


2月14日には南部フロリダ州パークランドの高校で17人がAR15型で殺されてから5年を迎えた。

遺族は「素早く大量に殺すよう設計された銃」と嫌悪感を露 (あら) わにした。

重さ約3キロ銃身は約1メートル

立ったまま構えると呼吸の乱れで照準がぶれ、約40メートル先の20センチほどの的には当たらなかった。

硝煙の臭 (にお) いは気にならない。

引き金を引くたびに新たな銃弾が装塡される半自動式で、既に次の射撃の準備に入っている。

緊張で強い疲労感を覚えた。



ニューヨークから車で約2時間のペンシルベニア州にある「サンセットヒル射撃場」。

法令に違反しないよう狩猟免許を取ったが初体験のため、指導員が弾倉を装塡する。

「直前まで引き金には指をかけない」「銃口をむやみに動かさない」と強く注意された。


塀に遮 (さえぎ) られた屋外の射撃エリアへの出入り口は限られ、壁にかけた銃器には全て鍵が掛けてある。

総責任者カール・シミノさん (65) はアーチェリーのように「安全に配慮すれば射撃は楽しいアクティビティだ」と説明した。


業界団体などによると、AR15型を主とする「スポーツライフル」は米国に2,400万丁以上が出回る。

設計した企業の頭文字から取った名称だが、あまりの人気に「アメリカ (A) のライフル (R)」とも呼ばれた。

800ドル (約10万8,000円)~2,000ドル (約27万円) 程度で購入できる。


軽さと扱いやすさ以外の特徴はその威力だ。

全自動式でないことを除けば軍用のM16と大差はない。

2016年にフロリダ州のナイトクラブで49人、2017年にネバダ州のコンサート会場で58人、2022年にテキサス州の小学校で21人の命を奪った。


バイデン大統領はテキサス州の事件後、AR15型を名指しして「なぜ、一般市民が攻撃用の武器を購入できないといけないのか」と述べ、たびたび殺傷能力の高い銃の販売禁止などを求めてきた。


射撃場のシミノさんは「良心的な市民から楽しみを奪い犯罪者は止められない」と規制に反対する。

捜査機関などが銃を保有すべきでない人物の情報を共有することが重要だと主張した。


パークランドの事件で17歳の息子を亡くしたマニュエル・オリバーさん (55) は「銃を持つ権利を侵害するという話ではない。生きる権利を保障するということだ」と規制の必要性を訴えた。

(ニューヨーク共同=稲葉俊之)

* * * * *

*米国でAR15型ライフルが使われた、主な乱射事件は次の通り。

・2012年12月14日:コネティカット州のサンディフック小学校で児童ら26人が死亡

・2016年6月12日:フロリダ州オーランドのナイトクラブで49人死亡

・2017年10月1日:ネバダ州ラスベガスのコンサート会場で58人死亡

・2017年 11月5日:テキサス州サザーランドスプリングズの教会で26人死亡

・2018年2月14日:フロリダ州パークランドの高校で生徒ら17人死亡

・2022年5月14日 ニューヨーク州バファローのスーパーで10人死亡

・2022年5月24日 テキサス州ユバルディの小学校で児童ら21人が死亡




(2023年3月16日号掲載)