2023年3月11日
バイデン政権は3月9日、2024会計年度 (2023年10月~2024年9月) の予算編成方針を示す予算教書を発表した。
同政権は議会に対し、国防予算を前年度比3.3%増の8,864億ドル (約121兆円) を充てるよう提案。
歳出総額は8%増の6兆8,830億ドル (約936兆円) とする一方、今後10年間で財政赤字を3兆ドル (約404兆円) 削減する方針も掲げた。
富裕層の負担増などを盛り込み、財政規律を重視する姿勢を示したが、赤字は前年度より膨らむと見込んだ。
米国では予算編成権を議会が握り、予算教書は審議の叩 (たた) き台となる。
下院で多数派を占める野党共和党が債務の増加を批判する中、綱渡りの財政運営となりそうだ。
バイデン大統領は9日の演説で、中国との研究開発競争に触れ「私の予算は、わが国が再び世界をリードするための資金を提供する」と訴え、厳しい安全保障環境に対応する考えを示した。
2024年度の歳入は5兆360億ドルとした。
バイデン政権は赤字削減に取り組むとしたものの、赤字額は2023年度の1兆5,690億ドルから1兆8,460億ドル (約249兆円) へ膨らむ。
今後10年の赤字額は計17兆540億ドル (約2,297兆円) になると予測した。
国防分野では「中国とロシアに対する強固な抑止力の維持に重点を置きつつ、北朝鮮やイランなどの脅威に対抗することも可能にする」と説明。
中国に対抗するため、インド太平洋地域での同盟強化も掲げた。
また、医療などの公的サービスを充実させる「大きな政府」路線を改めて明確にした。
高齢者向け公的保険メディケアについては年収が40万ドル (約5,400万円) を超える高所得者の保険料率を引き上げる。
石油、ガス会社への税優遇の廃止や、超富裕層に対する25%の課税を導入するといった課税強化策も盛り込んだ。
消費者物価上昇率は2023年が前年比4.3%、2024年は2.4%に縮小すると予測。
実質経済成長率は2023年が0.6%、2024年は1.5%と見込んだ。
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▪︎ 米予算教書:米大統領が次の会計年度 (今年10月~翌年9月) の予算編成方針として議会に提出する公式文書。一般教書や大統領経済報告と並ぶ「三大教書」の一つ。米国では予算編成権は議会が握っているため、大統領は予算教書を提出することで政権の意向を踏まえた予算案作成を促す。歳出と歳入の見積もりに加え、財政収支や経済成長率、失業率などの中長期的な見通しも示す。
(2023年4月1日号掲載)