Thursday, 21 November 2024

日米豪印「クアッド」首脳会合、中国牽制 枠組み制度化、トランプ氏返り咲きに不安

2024年9月25日

日米豪印4か国の協力枠組み「クアッド (QUAD)」が9月21日、デラウェア州で首脳会合を開いた。

旗振り役を担ってきたバイデン政権が来年1月に交代するのを控え、各国はインド太平洋地域で台頭する中国を睨 (にら) んだ連携の「制度化」 (米政府高官) に腐心する。

中国が威圧的な行動を強める南シナ海情勢や、核・ミサイル開発を続ける北朝鮮に懸念を表明する方向で最終調整しており、これまでのクアッド首脳会合で「最も強い表現」が含まれるとの見通しを示した。

一方で、多国間外交を軽視するトランプ前大統領が返り咲く可能性への不安も漂う。

▽名指し

「難題が現れても、クアッドが定着したのだから世界は (より良い方向に) 変わるだろう」。

地元デラウェア州ウィルミントン近郊。

ジョー・バイデン大統領は幾度も顔を合わせてきた岸田文雄首相、オーストラリアのアンソニー・アルバニージー首相、インドのナレンドラ・モディ首相を前に、関係は不変だと力を込めた。


「唯一の競争相手」と位置付ける中国に優位を保つため、バイデン氏はインド太平洋地域を重視。

クアッド会合を首脳レベルに引き上げたほか、日米比や、米英豪の安全保障枠組み「オーカス (AUKUS)」といった重層的な連携を構築した。

11月の大統領選から撤退後、初の大規模な外交舞台となった首脳会合に、レガシー (政治的遺産) 継承への使命感が滲 (にじ) む。


共同声明では、海上警察による船舶動向の合同監視など幅広い分野での協力強化に加え、来年のインドでの首脳会合開催も明記。

これまでと同様、中国を名指しするのは控えたが、対中抑止の色彩が濃い。


冒頭発言が一段落し記者団が退席後、最初に協議したテーマは中国。

「中国は攻撃的な振る舞いを続け、地域全体で我々を試している」。

自身の声をマイクが拾っていることに気付かなかったバイデン氏は、遠慮のない意見を披露した。

▽疑問

米主要メディアは、次期政権発足でクアッドへの姿勢が冷淡になるのではないかとの懸念が4か国全てで存在すると報じている。

悲観論が強いシナリオは、現在の路線を踏襲する公算が大きい民主党の大統領候補ハリス副大統領よりも、共和党候補のトランプ氏が勝利することだ。


国際協調に後ろ向きなトランプ氏は、米国が過度な負担を強いられているとして北大西洋条約機構 (NATO) を繰り返し問題視。

皺 (しわ) 寄せは、インド太平洋地域諸国へのインフラ支援を重ねるクアッドにも及びかねない。

協力分野に含まれる温暖化対策も、化石燃料の掘削推進を掲げるトランプ氏の方針と相容れない。


米議会では政権交代リスクに先手を打つ動きも出始めた。

9月20日、有志議員が超党派の「クアッド議連」を設立。

共和党のピート・リケッツ上院議員は、バイデン氏退任後も「協力推進に向けた着実な方法を見つけていく決意だ」と意気込む。


ただ、ハリス、トランプ両候補とも明確な方針が見えておらず、CNN-TVは展望には依然として「大きな疑問が残る」と分析している。

*Picture: YashSD / shutterstock.com

(2024年10月16日号掲載)