2023年11月27日
2024年1月から、アラバマ州で窒素 (nitrogen) 吸入による死刑執行が実施される見通しとなった。
英医学誌は世界初としている。
米国の死刑で40年以上使われる薬物注射は失敗が相次ぎ、死刑囚が苦しむ事例が発生したためだ。
擁護派は窒素吸入なら苦痛がないと主張するが「根拠はなく情報開示も不十分だ」との批判も出ている。
米国で薬物注射による死刑執行が始まったのは1982年。
鎮静剤と筋弛緩 (しかん) 剤、心臓を止める薬を注射するのが一般的。
だが、製薬会社は製品が死刑に使われるのを嫌い、流通を制限。
注射の担当官の技術が未熟で失敗する事例も起きている。
昨年11月にはアラバマ州で殺人罪が確定した50代のケネス・スミス死刑囚が寝台に数時間固定され、何か所も針を刺されて著しい苦痛を経験。
再び薬物注射による死刑執行をしないことなどを求めて訴訟を起こし、「問題を避ける現実的な手段は窒素吸入だ」と主張した。
窒素は空気の78%を占める気体で、高濃度では酸欠を起こす。
労災事故の事例から、苦痛をほぼ感じないで死亡に至るとみられ、少数の州が死刑への利用を認めた。
一方、獣医学会は動物の安楽死指針で、一部の哺乳類については苦痛を引き起こすため「許容できない」とする。
米法曹協会 (American Bar Association=ABA) によると、アラバマ州のケイ・エレン・アイヴィー知事は裁判所の判断に従い、スミス死刑囚に関して窒素吸入を使った執行期日を設定。
顔にマスクを装着させ窒素を流す方法だが、同州が開示した手順書は黒塗りが多く、1例目は「新手法の実験台になる」と懸念されている。
アラバマ州内にガスを供給する一部業者が窒素ガス供給を拒否したとも報じられた。
(2023年12月16日号掲載)