Saturday, 21 December 2024

血漿(けっしょう)治療「データ不十分」

緊急許可後に慎重評価

2020年9月3日

米国立衛生研究所 (NIH) の専門家委員会は9月1日、新型コロナウイルス感染症の患者に回復した人の血液成分「血漿 (プラズマ)」を投与する治療法は、有効性などのデータが不十分で標準的な手段と考えるべきでないとする声明を公表した。


食品医薬品局 (FDA) が8月に入院患者への緊急使用を許可したが、米政府内の別の保健当局が慎重な評価を突き付けた。

FDAの許可に当たりトランプ大統領は記者会見で「強力な治療法だ」 と称賛した。

詳しい根拠は示されず、11月の大統領選への政治的アピールとの懸念もあった。


NIHの委員会は声明で、これまでの研究から血漿中の抗体の濃度が高くても低くても重症者の7日後の生存率に違いはないと指摘。

投与しないより有益な可能性はあるが、有効性と安全性は臨床試験を経ておらず、不確かだとした。


そのため、血漿治療は「勧めるにも反対するにもデータが不十分」「標準的な治療法と考えるべきでない」と総括。

改定した医師向けの治療指針にも盛り込んだ。


治療指針では、他に有望な薬として注目されていたノーベル医学生理学賞の大村智・北里大特別栄誉教授が開発したイベルメクチンと、大阪大の岸本忠三特任教授が開発に携わったアクテムラにも言及。

いずれもこれまでの研究の評価から、臨床試験以外では患者に投与するべきでないと明記した。


(2020年9月16日号掲載)