2021年2月4日
米下院で、過激な陰謀論勢力「Qアノン」を支持する共和党新人議員の過去の発言が問題化している。
差別的で暴力的な内容で、共和党内では処分を求める意見がある一方で擁護論もあり、分断は深い。
多数派の民主党は議員を所属委員会から追放処分とする決議案を提出した。
この議員は女性のマージョリー・グリーン氏 (46)。
トランプ前大統領に「将来の共和党のスター」と讃えられ、昨年11月の下院選で初当選、今年1月に就任した。
問題となったのは過去数年にわたる会員制交流サイト (SNS) での発言。
反ユダヤ主義を唱えたほか、学校の銃乱射を「銃規制派によるなりすまし事件」と主張。
2001年の米中枢同時テロもでっち上げだと語るなど、荒唐無稽で攻撃的な主張を展開してきた。
共和党では上院トップのマコネル院内総務が2月1日、グリーン氏の名指しは避けつつ「狂ったウソや陰謀論は共和党や米国の癌 (がん) だ」と痛烈に非難した。
グリーン氏は「本当の癌は弱い共和党員」とツイッターで応酬。
「トランプ氏は去っていない。われわれは引き下がらないし絶対に諦めない」とも投稿し、トランプ氏の “後ろ盾” を誇示して威嚇した。
グリーン氏の処分を求める圧力にさらされた下院共和党のマッカーシー院内総務は3日、グリーン氏を批判する声明を出したが処分は科さなかった。
トランプ氏の影響力に配慮し、新人議員に振り回される印象を残した。
民主党のペロシ下院議長は声明で「マッカーシー氏が対処を回避し、共和党を『陰謀論とQアノンの党』にすることを選んだ」と指摘した。
グリーン議員は、ペロシ下院議長を含む民主党政治家の殺害を予告するSNSへの投稿に支持を表明したり、扇動的なコメントを付けていたことから、議員としての資質が疑われ、米政界内に強い反発が広がった。
ペロシ議長は1月28日、下院教育労働委員会からグリーン氏を外すよう、共和党指導部に抗議している。
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*Qアノン:陰謀論を信奉する極右勢力で、トランプ氏の岩盤支持層の一角を占める。Qアノンが唱える陰謀論は次の通り。世の中の構図は「善」と「悪」との闘いであり、トランプ前大統領は「善」と結びついているが、「悪」と結びつく民主党の大物政治家、著名ジャーナリスト、巨大娯楽産業の経営者たちが、米国の闇の政府いわゆる「ディープステート」を支配し、トランプ氏を陥れているというもの。
(2021年2月16日号掲載)