Friday, 19 April 2024

収益認識基準のコンバージェンスへ 改定公開草案公表 (2012.4.1)

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nagano_face.jpg   永野 文久

米国公認会計士

昭和17 年生まれ。  昭和41 年東京大学卒。同年三和銀行入社。
昭和58 年米国公認会計士。

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収益認識基準のコンバージェンスへ
改定公開草案公表 
 

米国に居住する日本人にとっては、日本の親類から財産の贈与もしくは相続を受けた場合、税制面でどのようなインパクトがあるのかが、とても気になる事項です。

日本の相続税も絡み、非常に複雑な様相を呈することになります。

まずは、米国の連邦遺産税がどのような仕組みになっているか概要を把握するのが第一歩となります。

今月は、遺産税について、最近の動向も踏まえた上で概説をします。
 

米国の遺産税の課税客体

日本の税法では、相続を受ける相続人個々人に対して相続税が課税 (申告義務) されることとなっています。

一方、アメリカの連邦遺産税 (Estate Tax) は、被相続人 (Decedent) の死亡による資産の移転に対して課税されます。

つまり遺産 (Estate) に対して課税される仕組みとなっています。
 

米国遺産税算出過程

米国遺産税の算出は以下のように行われます。
 

  • 総遺産額 (Gross Estate) -各種控除項目-特別非課税枠=課税対象額

課税対象額に税率を適用して税額を算出 (なお、贈与税に関しては簡便化のため無視している)
上記の各種控除項目には、葬儀費用、管理費用、債務と抵当権、慈善的遺贈 (無制限に可能)、配偶者控除 (無制限に可能。ただし配偶者が米国市民権を持つ場合) などが含まれます。

注目したいのは、米国籍の配偶者が相続するときは遺産税が課税されず、実質上課税の繰延がされることです。

1988年以前は、外国人配偶者にも無制限の配偶者控除が認められていましたが、遺産を持って外国に帰国してしまう等、米国が課税の機会を失ってしまうという問題点があるとされて制限が設けられました。

さらに、以下に述べるような特別非課税枠が設けられており、残った金額が課税対象額となって税率が適用されます。

米国遺産税の特別非課税枠の動向

米国の遺産税に関しては、時を遡り2001年に大幅な税制改正を実施。

The Economic Growth and Tax Relief Reconciliation Act of 2001 (EGTRRA) という名の法令のもと、向こう10年間かけて非課税限度枠を大幅に増やし、限度枠を超える課税部分に対しては適用される税率を低くして、相続に関する税負担を軽くするものでした。

この2001年の時限立法は2010年12月31日をもって終了する予定でしたが、2010年にできた法令 The Tax Relief, Unemployment Insurance Reauthorization, and Job Creation Act of 2010 (Tax Relief Act of 2010) により、EGTRRAの恩恵が2012年12月31日まで延長されることになりました。

その結果、2011年と2012年、および延長が終了した2013年の非課税枠とそれを超える部分への税率は以下の通りとなります。
 

  • 2011年:Estate Tax非課税枠 $5 million  最高税率 35%
  • 2012年:Estate Tax非課税枠$5.12 million 最高税率 35%
    (2012年の上記数字は、インフレの調整を含む)
  • 2013年:Estate Tax非課税枠 $1 million 最高税率 55%
    (2013年の数字は、今後議会で更なる税制改正が行われない限り、2001年度の水準である上記数字に戻る予定になっている)

 

日本人が関係する国際的相続

日本人が関係する国際的相続の場合、日米どちらの国でどのような申告義務が発生するかは、様々な要素を考慮する必要が出てきます。

その主な要素は以下のようなものです。
 

  1. 被相続人と相続人の遺産税法上の居住国(*1)
  2. 相続財産の置かれている国
  3. 相続財産の種類

 

(*1) 遺産税法では、居住国判定はDomicile (居住地) が米国内にあるか否かにより決定される。米国のグリーンカードを持っているだけでは、遺産税法上の居住国が米国にあるとは言えないが、グリーンカードを持ち、さらに米国で家を購入している場合には居住国は米国にあるとされる。このように、遺産税法上の居住国の判定は所得税法とは異なる。
 

簡単な遺産税の計算例

以下に簡単な例を1つ取り上げます。

なお、単純化のために下記の例においては、贈与に関する控除は省略します。
 

<設定>

山田哲夫 (仮名) さん70歳:日本国籍。アメリカの永住権は持っていない。2012年に死亡

山田花子 (仮名) さん:哲夫さんの配偶者。日本国籍。5年前に死亡

山田大輔 (仮名) さん:長男45歳。日本在住。日本国籍

山田佳子 (仮名) さん:長女40歳。アメリカ市民。日本国籍は21歳の誕生日を前に放棄

被相続人である哲夫さんは生前、日本とアメリカを往来しながら音楽活動を行っていた。

佳子さんが生まれた直後の40年前にビバリーヒルズに$7 millionの住宅を購入。

話を単純にするため、哲夫さんが2012年に亡くなった時の時価も$7 millionと仮定する。

さらに、哲夫さんは日本にも家と銀行口座を持っており、それらの合計価値は米ドル換算にしてアメリカの家と同額の$7 millionと仮定する。

哲夫さんが亡くなったときに、日本に住む長男の大輔さんが日本の家と銀行口座を相続し、アメリカに住む長女の佳子さんはアメリカの家を相続する場合、アメリカの遺産税はどのように課税されるか。
 

▽ 課税関係

哲夫さんは日本国籍かつ非永住権者であるため遺産税法上アメリカ非居住者となり、哲夫さんの遺した日本国内にある資産にアメリカ遺産税は課税されない。

アメリカに存在している遺産も、哲夫さんが遺産税法上の非居住者であるため、全てが遺産税の対象になる訳ではない。

課税されるのは、不動産、有形資産、証券等であり、例えば、哲夫さん名義の米国銀行預金はアメリカ遺産税の対象にならない。

設例で長女の佳子さんが相続した遺産は不動産であり、アメリカの遺産税の対象となる。

上述したとおり、アメリカの遺産税は財産を与える側に報告・納税義務があるので、この場合、亡くなった哲夫さんの遺産管財人がアメリカに住む長女が相続した不動産に関して、父親名義でアメリカで遺産税の申告および納税をする必要がある。
 

▽ 計算過程

亡くなった哲夫さんは遺産税法上の非居住者であり、遺産税法だけを見ると、上記の2012年度の非課税枠の$5.12 millionを使うことはできない。

但し、日米相続税条約により特別非課税枠を全世界の遺産に対して適用できる。

つまり、日本とアメリカの遺産総額$14 millionに対して$5.12 millionを按分して適用する。

日本とアメリカが同額なのでアメリカに存在する遺産に対しては、非課税枠の半分の$2.56 millionを利用することができる。

哲夫さんが亡くなった際の葬儀管理費用$500,000がアメリカでかかり、生前の贈与はなかったと仮定。

初めに純遺産額を出す。

総遺産額$7,000,000から葬儀管理費用の控除可能額$500,000を引いた$6,500,000 (純遺産額)。

これから死亡した2012年度の特別非課税枠である$2,560,000を引いて課税対象額を出す。
 

  • $6,500,000 – 2,560,000 = $3,940,000 (課税対象額)

この金額を元に、2012年度のTax Tableから税額を拾うと、$1,359,800が税金になり、税率は約34.5%程になります。
 

(*注意) 本稿は連邦遺産税の概説であり、相続に関する規程の中のほんの一握りしか取り上げていない。さらに設例も話をかなり単純化しているので、実際のケースの判断には利用しないでいただきたい。実際のケースでは、贈与・相続の税額算定に関して、その他さまざまな要素を検討する必要があり、個々に専門家にアドバイスを仰いでもらいたい。


※注意:このコラムは米国での税務に関する一般論的概説ですので、実際の案件については個別に専門家の意見を求められるようにお願いします。
 
(2012年4月1日号掲載)

 

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