吉原 今日子
米国カリフォルニア州弁護士
その後、法学博士(JD)を取得。
会社の経営、組織体系、人材の重要性を常に念頭に置いた法的アドバイスを行います。カリフォルニア州弁護士会、米国移民法弁護士会所属。
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親の呼び寄せ | |||
Q 私はアメリカ人と結婚し、永住権を取得しました。 父はすでに他界し、母が兄家族と日本で暮らしています。 母は年に2回ほどアメリカに来ているのですが、ゆくゆくはアメリカに呼び寄せ、一緒に暮らしたいと思っています。 将来的には、母にも市民権を取らせたいと思っています。どうすればいいでしょうか?
A まず、あなたがアメリカ市民権を取得し、その後、お母様を呼び寄せるのが得策だと思います。 最初の手続きである市民権申請の際には、まずその条件として、グリーンカード (永住権) を取得してから5年 (アメリカ市民と結婚した場合は3年) 経過していなければなりません。 期間満了の3か月前から申請を開始できます。 ですから、グリーンカードを取得してから4年9か月 (アメリカ市民と結婚した場合は2年9か月) 経過していれば申請可能です。 また、この規定期間 (5年ないし3年) のうち、合計してその半分 (5年の場合は30か月) 以上はアメリカに滞在していなければなりません。 この規定期間はアメリカに継続的に居住する必要があり、もしアメリカを長期間不在にすると、市民権の取得ができない場合があります。 詳細は次のようになります。
① 6か月未満の不在 アメリカに継続的に居住しているとみなされます。
② 6か月以上1年未満の不在 アメリカにおける継続的な居住を放棄したことみなされ、市民権の取得に影響を及ぼす可能性があります。この場合は、申請者がアメリカにおける継続的な居住を放棄していないという客観的な証拠を提出することにより、申請が認められる余地がありますが、この立証責任は申請者の方にあります。特に最近では、審査が非常に厳しくなり、このようなケースの場合、申請書に説明や証拠書類が添付されていないと、申請書自体が審査に入る前に送り返される傾向にあります。
③ 申請3か月前にはアメリカに在住していなければなりません。 申請をする前の3か月はアメリカに住所があり、アメリカに滞在している必要があります。
④ 1年以上不在の場合 市民権を申請する条件として、継続的なアメリカでの居住条件を満たさないとみなされます。ただし、アメリカの軍隊に属していたり、アメリカの政府機関、あるいは、宗教目的による場合などは例外とされています。
これらの条件は、市民権申請が始まった後も、取得時まで満たし続けなければなりません。 ただし、これらの規定は厳格な判断基準ではなく、一般的なガイドラインとして使用されるものであり、各々の判断は個別になされています。
市民権・永住権申請方法と取得までの期間 アメリカ市民権の申請には 「N-400」 という書式に記入し、US パスポートサイズの写真2枚、グリーンカード (表裏) のコピーに、申請料680 ドル (指紋登録料85 ドルを含む) を添えて申請します。 申請書を提出した後は、指紋登録の通知が来ます。申請書提出後、約4か月でインタビューになります。 ここでは、アメリカを出国していた期間の吟味や、それ以外の内容の審査があります。また、アメリカの歴史や政治などに関する基本的なテストを受けることになります。 出題される問題のほとんどは決められた100問のうちから出題されます。 最近、この問題以外から出題される例も稀 (まれ) にみられますが、この場合でも、全体の60%以上を正解すれば合格となるので、既定の問題と答えをすべてしっかり覚えておき、少なくともその中から出題されたものに関しては、必ず正解できるようにすることです。 インタビューの後、約1、2か月で宣誓式になり、この日に正式にアメリカ市民となります。 あなたの場合、その後、お母様のグリーンカードを取得する際には、日本、またはアメリカにて手続きを行う方法があります。 日本で手続きを行う場合には、移民局に 「I-130」 という書類を提出し、その認可を待って、日本のアメリカ大使館で申請を行うことになります。 この I-130 の審査には、現在約7か月を要しており、この後、日本のアメリカ大使館にてインタビューが受けられるまで、さらに約6か月を要することになります。 アメリカでグリーンカードを申請する場合だと、グリーンカードを取得するまでのすべての手続きは約4~5か月程で完了し、さらに、申請後約2~3か月程度で就労許可、および再入国許可を取得できます。 これによって、移民局でのインタビューを受けるまでの間、就労、および海外への出入国が可能になります。 また、最近では、本件のようなアメリカ市民の子供が親を呼び寄せる場合には、大使館、および移民局でのインタビューが免除されるケースが多々見られるようになりました。 |
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この記事は、参考として一般的な概要をお伝えすることを目的としたものです。各ケースのアドバイスは必ず弁護士及び専門機関にご相談下さい。 | |||
(2013年6月16日号掲載) | |||