吉原 今日子
米国カリフォルニア州弁護士
その後、法学博士(JD)を取得。
会社の経営、組織体系、人材の重要性を常に念頭に置いた法的アドバイスを行います。カリフォルニア州弁護士会、米国移民法弁護士会所属。
駐在員の永住権申請 |
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Q 私は2年前より、日本の本社の駐在員としてアメリカの支社で働いています。
現在、E-2ビザを保持しており、こちらの業務の統括を任せられています。
当分、日本へ帰ることもありませんし、子どもの将来のこともあり、グリーンカード申請を考えています。
L-ビザを持っていると申請が速いと聞きましたが、本当ですか?
A 雇用を通しての永住権取得は、通常、第一優先、第二優先、第三優先、第四優先に分けられます。
永住権を申請する場合には、一般的に、まず労働局での審査を必要とします。
この申請では、会社が十分に募集活動を行い、アメリカ人労働者に対して雇用の機会を十分に与えたかどうかが重要な審査基準となり、新聞紙上、インターネット等での募集広告を行う必要があります。
今のところ、人材募集期間2か月、労働局の審査が6~12か月かかります。
しかし、あなたは現地採用ではなく、日本の会社から送られているので、第一優先の多国籍企業の重役等のカテゴリーに含まれ、労働局の審査を受ける必要がなくなります。
第一優先の中には、極めて高度な技術、能力を有する者、著名な教授などが含まれています。
あなたの場合、以下のことを証明することによって、永住権の申請が可能です。
①日本 (海外) にある会社とアメリカにある会社が親子関係にあること。これには、アメリカにある会社の50%以上の株式を日本 (海外) にある会社が直接的に所有している場合。また、アメリカの50%以上の株主が日本 (海外) の会社の50%以上の株式を所有している場合も親子関係にあるとみなされます。
②駐在員として、アメリカの会社で、部長、あるいは重役クラス等の管理職についていること。移民局では、一般的に重役クラスとは、申請者自身に部下がいるということでは十分ではなく、申請者の部下に部下がいることが要求されます。言い換えると、申請者を頂点として2段のピラミッド型の管理体系があることが必要です。
③駐在員として、Lビザ、あるいはEビザにてアメリカに入国する前の過去3年間のうち、少なくとも、1年以上、部長、あるいは重役クラス等の管理職として日本 (海外) にある親会社 (子会社、系列会社) において勤務していたこと。
④アメリカでの役職が短期のものではなく、永久的なものであることです。これには、アメリカでの会社が日本 (海外) の親会社より永住者を送らなければならないほどの規模のものであると見なされなければならず、それには、相当額の売り上げと、相当数の従業員の存在が要求されます。
上記の条件を満たしていれば、Lビザ、E ビザに関係なく、第一優先カテゴリーにおいての申請が可能です。
労働局を通すことなく、直接移民局へ永住権の申請書を提出することができます。
申請には、アメリカと日本 (海外) にある会社の両方から、決算報告書、会社設立に関する書類など、会社が実際に存在し、経営を行っていることを示す書類が必要となります。
万が一、会社の経営状態が乏しく、従業員がいない会社などは、上記の条件を満たしている場合でも移民局から永住権の許可を受けることは困難です。
アメリカ国内で移民局へ永住権の申請をする場合、Immigration Petition for Alien Worker (I-140)、Application to Register Permanent Residence or Adjust Status (I-485)の書類申請を提出します。
I-485の申請を入れる時点で、お子さんが21歳以下であれば、お子さんもあなたと同時に永住権を取得することができます。
この申請方法を取れば、I-485を提出した約3か月程度で労働許可、渡航許可が下り、その時点から、今持っているEビザは必要なくなります。
Eビザの方に注意していただきたいのは、渡航許可が認可されるまで、アメリカ国外に出国できなくなることです。
もし、その間に渡航の必要がある場合は、移民局へ申し出て、特別渡航許可申請をしなければなりません。永住権申請の許可が下りるのは約1年程度です。
あるいは、I-140の申請書のみを移民局に提出した後、インタビューを日本で受けることもできます。
この場合、I-140の認可に約4か月かかります。I-140が認可さるまでにお子さんが21歳に到達していなければ、お子さんも日本へインタビューに行って頂き、一緒に永住権を取得することができます。
I-140の認可後、日本でのインタビューまで7か月を要します。
この場合は、インタビューの時まで、今お持ちのEビザをグリーンカードが取れるまで保持する必要があります。
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この記事は、参考として一般的な概要をお伝えすることを目的としたものです。各ケースのアドバイスは必ず弁護士及び専門機関にご相談下さい。 | |||
(2014年10月16日号掲載) | |||