吉原 今日子
米国カリフォルニア州弁護士 USDにて経営学修士(MBA)を取得。
ご質問、ご連絡はこちらまで その後、法学博士(JD)を取得。 会社の経営、組織体系、人材の重要性を常に念頭に置いた法的アドバイスを行います。カリフォルニア州弁護士会、米国移民法弁護士会所属。 |
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Q. 私は日本の大学を卒業後、10年間働いた後にアメリカに来ました。 現在、L-1Bビザを保持し、会社を通してグリーンカードを申請しています。 私の場合、グリーンカードは1年半ほどで取得可能と聞いていますが、私には米国の大学に通う長女がいて、もうすぐ21 歳になります。 私がグリーンカードを取得する前に娘が21 歳の誕生日を迎えてしまうと、私と一緒にグリーンカードが取れないだけでなく、その時点でEビザの資格がなくなり、学生ビザに切り替えないといけないと聞いています。 そうすると学費も上がるので、何とか一緒にグリーンカードを取得したいと思います。 良い方法はありますか。
A. 4年制大学を卒業し、5年以上の職歴 (あるいは職歴がなくとも修士号以上を取得) があれば、グリーンカードの申請における第2優先のカテゴリーに属し、通常よりもはるかに短い期間で取得することができます。 仮に、あなたのお嬢さんの21歳の誕生日までにグリーンカードが取得できない場合、お嬢さんが「Child Protection Act」の適用を受けることができるかどうかが大きな問題となります。 この点について、以下に説明させていただきます。 雇用を通してグリーンカードを申請する場合、一般的にその第1段階として、労働局に「Prevailing Wage (申請職種における平均的な給与)」がいくらであるかを確認した後、人材募集広告を出します。 そして、労働局に「労働認可証 (Labor Certification)」の申請を行い、その認可を受ける必要があります。 この最初の手続きには、通常 Prevailing Wage の要請から人材募集広告完了まで約3〜4か月、労働局の審査に約3~5か月、合計で平均約7か月を要しています (2012 年3月時点)。 ただし、労働局からの監査 (Audit)、または Supervised Recrutiment (広告募集のやり直し) を受けてしまった場合 (これは、一般的にランダムに行われる場合がほとんどです) には、さらに10か月を要することになります。 第2段階では、スポンサーである会社が、当該従業員 (申請者) に労働局が定める規定の給料を払うだけの経済的能力があるかどうかが審査されます。 この申請は、通常I-140 による申請と呼ばれます。 最後に第3段階として、申請者自身が条件を満たしているか、犯罪歴や不法滞在歴がないかなどが審査されます。 この申請は、通常I-485 による申請と呼ばれます。
労働認可証の取得時期が大きな鍵 Child Protection Act では、I-485 の申請を行った時点で子供が21歳に達していなければ、その後、グリーンカードの取得までにどれだけ時間がかかっても、子供も同時に取得できると規定しています。 従って、I-485 の申請が認可され、あなたがグリーンカードを取得した時点で、お嬢さんが21歳の誕生日を既に迎えていたとしても、あなたと同時にグリーンカードを取得することができるわけです。 さらに、あなたの I-485 の申請が何らかの理由で却下され、その後、不服の申し立て (Motion to reopen、Motion to reconsider)、あるいは異議の申し立て (Appeal) を行い、その後、認可を勝ち取ったような場合であっても Child Protection Act が適用されるとされています。 従って、あなたの場合、いつ前記の Labor Certification を取得できるかが重要な鍵になります。 労働局からの監査を受けない場合ですと、前述したように、現在、平均約7か月間で Labor Certification の手続きを終了することができる一方、監査を受けてしまうと、合計で約17か月間かかることになります。 あなたがこの監査を受けなければ、かなりの可能性で、お嬢さんは一緒にグリーンカードを取得することができるでしょう。 しかしながら、万一監査にかかってしまい、Labor Certification が認可された時点でお嬢さんが21歳の誕生日を迎えてしまっていれば、ご一緒にグリーンカードを取得することはできません。 その場合、家族申請、あるいは独自に申請することを考えなくてはなりません。 そこで、現時点でまだ Labor Certification の申請に到っていない段階にあるなら (監査を受けるか否かは、特殊な場合を除いてあなた自身がコントロールできないことであるとしても)、Labor Certification 申請までの時間をできる限り無駄にしないように、Prevailing Wage のリクエストや人材募集広告等の手続きを、円滑に進めておくことをお勧めします。 |
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この記事は、参考として一般的な概要をお伝えすることを目的としたものです。各ケースのアドバイスは必ず弁護士及び専門機関にご相談下さい。 | |||
(2012年4月16日号掲載) | |||