Thursday, 21 November 2024

入国審査でのトラブル対策 (2015.11.16)

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ishinabe_face.gif石鍋 賢子

米国カリフォルニア州弁護士

上智大学外国語学部英語学科出身。ビジネス系の移民法専門弁護士として20 年の経験を持つ。グレイ・ケリー・ウェア&フリーデンリッチ、ララビー&アソシエーツ等法律事務所勤務を経て、独立し、事務所設立。

米国弁護士会(ABA)、サンディエゴ弁護士会(SDCBA), 米国移民法弁護士会(AILA) 会員。サンディエゴ在住19 年。

 

 

 
 
       
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入国審査でのトラブル対策

       
 

Q 私は永住権保持者です。

もう何年も前に、DUI (飲酒運転) で取り締まりを受けた経験が一度ありましたが、事故等はなかったので、飲酒運転防止クラス出席、罰金、奉仕作業などで済み、すっかり過去のこととなっていました。

ところが、どうしたことか最近、海外出張後、入国審査のたびに止められ、二次審査へ回され、大変な時間のロス及び心痛を経験しています。

永住権の維持には問題ないはずなのですが困っています。

仕事上、出張の機会が多く、このような状況は大変なストレスです。

どうしたらいいでしょうか。

 

 

A 入国審査は、移民局ではなく、国土安全保障省下にある税関国境保護局 (CBP)が管轄しています。

CBPには独自のデータベースにより、政府各局からの情報が随時追加されているばかりか、テロ対策の方針、情報などにも関与しています。

本来なら入国拒否になる状況でないにもかかわらず、止められ、長時間待たされ、質問され、結局、何もなく放免となるようであれば、① 過去の情報が更新されておらず、現在にも影響する情報という形で残っている、② 何らかの事情で要注意人物と混同されている、③ 単なる入力ミスを含んでデータに不具合がある、などの可能性が考えられます。

 

CBPでは、このような状況に対応するため、TRIP (旅行者救済問い合わせプログラム) という制度を設けています。

"CBP TRIP"で検索するとTRIP公式サイトが出てきます。

 

問題状況を当局に指摘し、訂正・更新してもらう手段ですが、基本的にインターネットでの申請を行うようになっています。

TRIPのサイトには、問題となる典型的な状況が約20項目リストされていますので、該当するもの、近いものを選び、続いて個人情報を入力してください。

その後はスクリーンの表示に従い、本人確認の書類、その他必要に応じて、関連する移民局書類等をスキャンしてメールできます。

申請後にケース番号が発行され、状況が内部調査されることになります。

例えば、質問者の状況では、パスポート、グリーンカードをスキャンし、ケース番号を記載したメールに添付して送信します。

 

 

Q 調査が行われた後、その詳細は教えてくれるのでしょうか。

 

 

Aセキュリティ上の理由で、なぜ当事者が繰り返し二次審査に呼ばれていたのか、必要以上の審査が行われたのか、どのような警告情報がデータベースに表示されていたのか、などは全く明らかにされません。

書類に不備があったり、必要なものが不足していれば、追加提出が必要になるかもしれませんが、面接や窓口出頭を求められるようなことは通常ありません。

また、原因が究明されたところで、どのような対策が取られたかも説明されません。

とはいえ、もし政府側のデータに誤りがあった場合には、訂正もしくは必要事項が追記され、不具合が生じないようにする対策が講じられるようです。

また、場合によっては、必ずしも本人に注意事項がなくても、問題のある人物と名前が一致していた、類似していた、取り違えられた、などの理由で問題が生じていた可能性もあります。

このような場合にも、データベースに必要な追記が行われて、他人と混同されないよう処置が取られるようです。

申請から約4か月後に調査終了通知が届き、具体的な内容は明らかにされないながらも、調査が行われたこと、処置が必要な場合は適宜対応されたこと、などが記載されます。

また、それ以後に旅行をする場合、航空券予約の際に TRIP のケース番号を含めるようアドバイスされます。

質問者の場合も、TRIPへの申請によって事態が解決すると思われます。

 

 

この記事は、参考として一般的な概要をお伝えすることを目的としたものであり、個々のケースに対する法律のアドバイスではありません。
 
  (2015年11月16日号掲載)
       

 

 

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