Thursday, 21 November 2024

グローバルエントリー (2016.1.16)

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ishinabe_face.gif石鍋 賢子

米国カリフォルニア州弁護士

上智大学外国語学部英語学科出身。ビジネス系の移民法専門弁護士として20 年の経験を持つ。グレイ・ケリー・ウェア&フリーデンリッチ、ララビー&アソシエーツ等法律事務所勤務を経て、独立し、事務所設立。

米国弁護士会(ABA)、サンディエゴ弁護士会(SDCBA), 米国移民法弁護士会(AILA) 会員。サンディエゴ在住19 年。

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グローバルエントリー

       
 

Q 私は永住権保持者です。

仕事の都合上、海外出張が多いのですが、アメリカへ戻るたびに入国審査の長い列に並ばされ、空港にある 「グローバルエントリー」 の機械を見るにつけ、今度申し込もうと思うのですが、あまり聞かないのでいまいち躊躇しています。

グローバルエントリーについて教えてください。

 

 

これは「信頼される旅行者」 に対し、入国審査を機械により自動化して能率を向上させ、便宜を与えようというものです。

ビザ免除対象者に関して事前渡航認証 (ESTA) がありますが、 ESTAは、米国税関国境保護局 (CBP)のウェブサイトで、オンラインで該当事項を記入して即時に審査結果を得るという比較的手軽な方法です。

それに対して、グローパルエントリーは、そもそも入国審査そのものを動化するものであるため、指紋採取のほか、事前に当局に出向いて面接を受けるなどの手続きが必要になります。

ですが、これまでに交通違反等を除いて、法律違反が全くなければ心配いりません。

リスクの低い、CBPが事前に承認した旅行者として、空港ではカウンターの長い列に並ばずに、設置してある機械にパスポートと指紋を読み取らせて税関申請を行えば、レシートのような紙が発行され、入国審査を通過できます。

 

 

 

Q アメリカでは法律違反はありませんが、以前に日本の税関で問題がありました。申請に通るでしょうか。

 

 

グローバルエントリーは入国審査という、いわば不適切な外国人をスクリーンするための重要なプロセスを自動化するわけですから、その許可条件も幅広く、厳しいものとなっています。

グローバルエントリー該当者としては、本人が低リスクであると立証されることが必要で、その前提として、

刑法上、いかなる有罪歴をも持たず、また係争中の容疑もないこと、② いかなる国でも、関税法、移民法、または農業法上の違反行為がないこと、③ 連邦、州、地方自治体など、いかなる政府当局からも「調査」の対象になっていないこと (調査のタイプについては言及されていない)、④「入国不許可」 の免除申請をしている者を含み、入国禁止でないこと、⑤ その他、CBP当局が規定するところの低リスク条件を満たしていること、

となっています。

ですから、上記のいずれかが欠ける場合、グローバルエントリーは利用できないかもしれませんが、違反等の内容によっては、永住者としての入国資格に影響するものではなく、列に並んで普通に入国審査を受けられます。

 

 

 

Q 面接では何を聞かれるのでしょうか。

 

 

A 書類審査の後は、本人と実際に会って本人確認、関連事項の確認などが必要とされています。

従って、住所、勤務先、家族など基本的な事項の確認が中心ですが、その他経歴について当局側で質問があれば聞かれます。

 

 

 

Q グローバルエントリーに申し込んで、許可されなかったら、永住権も取り消されるのでしょうか。

 

 

A 前述したように、グローバルエントリーは一定の基準を満たしている人に入国審査を簡易化するというものですが、もともと永住者としての入国条件に問題がないのであれば (永住権取得後、犯罪を起こしてしまった、その他)、永住権には影響しません。

 

 

 

Q ちなみに、これは永住権保持者とアメリカ市民に限られているのですか。

 

 

A 両者に加えて、ネザーランド (オランダ) と韓国を対象に同等のプログラムがあり、CBPの協定がある国の人も、一部の特殊なビザ保持者を除いて申請することができます。

 

 

この記事は、参考として一般的な概要をお伝えすることを目的としたものであり、個々のケースに対する法律のアドバイスではありません。

  (2016年1月16日号掲載)

     

 

 

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