曽 碧光
米国中医薬研究所所長
1932年台湾に生まれる。
東京大学農芸化学修士、米国カンサス大学微生物学修士、東京大学薬学博士、 元米国コネチカット大学病理学助教授、第1 回世界中西医結合大会審査委員、セント・エリザベス病院 (ボストン) 筋ジストロフィー主任研究員、ドライ・アイ眼科研究所生化学顧問、元米国漢方研究所所長、現米国中医薬研究所所長。
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漢方の二処方併用 |
Q : 8月号の「漢方Q&A」に、漢方の二処方併用治療例が紹介されていましたので、漢方使用者として大変役に立ちました。 他にも二処方治療例がありましたら、お教えください。
A : 西洋医学的診断、漢方医療的治療が一般化した今では、漢方治療の効果を高めるために漢方の二処方併用が多くなっています。 以下に、その主な二処方併用治療例を挙げます。
1. アレルギー性鼻炎 ― 小柴胡湯と葛根治鼻湯の併用 葛根治鼻湯はアレルギー性鼻炎や花粉症によく使われている漢方ですが、小柴胡湯とよく併用されます。 小柴胡湯は本来、肝炎治療または肝臓機能増強に使用されている漢方ですが、他の漢方と一緒に使うと、一緒に使った漢方の効果を倍増させる作用があり、よく他の漢方と併用することが多いのです。 長年、アレルギー鼻炎に悩まされていたAさんが、小柴胡湯と葛根治鼻湯の併用で、慢性の鼻づまりがすっきりスースーと通るようになったと大変喜ばれて、電話で知らせてきました。
2. 慢性腎炎 ― 小柴胡湯と五苓散の併用 腎炎治療には、免疫調節作用のある小柴胡湯と水分代謝調節作用のある五苓散が併用されることが多いものです。 西洋薬の腎炎治療ではステロイド剤がよく使用されているので、ステロイドからの離脱や、副作用を防ぐために漢方を併用するケースが多く見られます。 小柴胡湯は単に慢性腎炎の進行を阻止するだけでなく、ステロイド治療による副作用を減除する作用があります。 無論、初めからステロイド治療を避けて、漢方治療にした方が副作用の心配が省けます。
3. 白内障 ― 八味丸と人参湯の併用 前千葉大学眼科教授の藤平健博士が八味丸と人参湯を併用し、老人白内障を治したと報告したことから、この2つの漢方併用が白内障治療によく使われるようになりました。 |
(2012年10月1日号掲載) |