Thursday, 21 November 2024

テストステロンによる若返り法の危険な副作用(2012.11.1)

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son_new8.jpg 曽 碧光

米国中医薬研究所所長

1932年台湾に生まれる。
東京大学農芸化学修士、米国カンサス大学微生物学修士、東京大学薬学博士、 元米国コネチカット大学病理学助教授、
第1 回世界中西医結合大会審査委員、セント・エリザベス病院 (ボストン) 筋ジストロフィー主任研究員、ドライ・アイ眼科研究所生化学顧問、元米国漢方研究所所長、現米国中医薬研究所所長。


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テストステロンによる若返り法の危険な副作用

Q : 最近、インターネットのウェブサイトで、性欲とセックスの興奮度が減退し、体のエネルギーが終日無いと感じる中年男性にはテストステロンがよく効くという宣伝広告をよく見かけます。

テストステロンは若返りの薬と宣伝されていますが、テストステロンは本当に効くのでしょうか。

また、どんな副作用があるのでしょうか。


 

A :   テストステロンは男性の生殖器である睾丸で合成される性腺ホルモンです。

テストステロンは年を取るに従って減少するので、老化と関連があると考えられています。 

アメリカ人の平均寿命は今78歳になり、戦後のベビー・ブーマー世代が老年期に差し掛かっているこの機会に、アメリカの製薬会社はテストステロンを若返りの薬として極力宣伝してマーケット獲得に力を入れています。

中年男性の中には、性欲とセックスの興奮度が減退し、体のエネルギーが終日無いように感じた時に、テストステロン・サプリメントで手早く若作りを図ろうとする人が少なくありませんが、多くの医師たちは、体のエネルギー低下と性欲減退は、加齢に伴うテストステロンの低下よりも、むしろ甲状腺の問題や、職を失ったことによる焦燥感などによると考えています。

米国国立老化研究所のサーゲイ・ロマシカン博士も、高齢者にテストステロンを与えた場合、どういう効果があるのかという臨床研究もない上に安全性の検証もなされていないので、軽々しく使うべきでないと言っています。

また、テストステロンの副作用として、前立腺癌、凝血、不眠と睡眠中の窒息があります。

テストステロンは前立腺癌を起こす副作用があるので、テストステロンをとる前に、前立腺癌診断のひとつである直腸内に指を入れて触診する検査、および血中のPSAレベル測定を行わなければなりません。

PSA値が4ng/dl以上、もしくは前年より1ng/dl上がっていれば、テストステロンをとるのを控えなければなりません。

テストステロンによって前立腺癌を起こす危険性が高くなるからです。

幸い、生殖機能やホルモン分泌と副腎の働きなどを促進増強する効果のある漢方、
八味丸にテストステロンの分泌を刺激促進する作用があることが近年の研究で分かりました(Am. J. Chinese Med. XVI, 92-106, 1988)。

従って、八味丸を服用することによって体内のテストステロン分泌を刺激増強すれば、テストステロン使用による副作用を避けることができます。

また、八味丸には免疫増強と活性酸素除去作用があるので、老化防止の漢方としてよく使われています。

 

 
(2012年11月1日号掲載)

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