母国の土が素材の3次元オブジェ 環境破壊を糾弾するチリの芸術家
TERRA: Fernando Casasempere
2022/9/5 (月) まで
San Diego Museum of Art
https://bit.ly/3vojCni
フェルナンド・カサセンペーレは、ロンドンに活動拠点を置くチリ出身のアーティストだ。
陶芸の可能性を追求した美しく有機的なフォルムの作品や、流れるようなマーブル模様の、亀裂や空洞を含んだ独特の彫刻作品を特徴とする。
サンティアゴで生まれ育ち、プレ・コロンビア期の美術工芸や遺構に魅了されたカサセンペーレは、それらをコンテンポラリーアートの文脈の中で再解釈し、新たな造形へと発展させることに重きをおいている。
環境問題にも強い関心を寄せており、チリ北部などのラテンアメリカの景観から着想を得た屋外での大規模なインスタレーションも多数手がけている。
自然や生態系、地理への深い造詣に裏打ちされた作品は、ロバート・スミッソンやリチャード・ロングをはじめとしたランド・アートにも関連づけることができるだろう。
また、20年にわたる異国での生活も制作に多大な影響を与えており、カサセンペーレは次のように語る。
「イギリスのようなひらかれた環境に身を置いていると、ラテンアメリカの芸術や要素をより理論的、多角的に捉えられるようになり、自分の作品に対しての好奇心や関心が増加する。」
フェルナンド・カサセンペーレは1958年サンティアゴ生まれ。1980年代にバルセロナにて陶芸と彫刻を学び、1986年チリに帰国。1997年にロンドンに拠点を移した後は「Falla Ideologico」(サンティアゴ現代美術館、2012年)をはじめとして、世界各地で精力的に個展を開催。2012年のロンドンオリンピックに合わせて開催された個展「Out of Sync」では、粘土で作られた約1万本の花をサマセット・ハウスの中庭に展示し、大きな話題を呼びた。また、昨年にはサンティアゴのチリ国立美術館にて大規模な個展「Mi Andadura」を開催し、好評を博した。作品は、ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館やチリ国立美術館、ボストン美術館、ハーバード大学美術館などに収蔵されている。
この展覧会は、4つの没入型インスタレーションで構成され、人類と地球との相互作用について考察するよう、一般の人々に呼びかけている。
2019年にマドリードのカサ・デ・アメリカで初めて発表された本展は、アーティストにとって米国で初の個展となる。
本展の4つのインスタレーションは以下の通り。
- 「Reframing Our Relationship with the Earth」は、骨片に似た粘土の部品を一つ一つ手で押し固めた数千個の土のマウンドが特徴で、人類が地球に与える影響を物語っている。
- 「Earth Book/The Sphere of Things to Come」は、地球を表す粘土の本と球状の構造物を展示し、変化がなければ失われるかもしれないものの物理的なアーカイブを構成している。
- 「Salares」では、チリのアタカマ砂漠の塩田に敬意を表して粘土で作られた吊り下げ式の景観形成物や、気候変動による自然災害から逃れた文明を表す、旅するディアスポラの拡大したモルタルボウルが展示されている。
- 「Reminiscences」では、遺跡の断片をセラミックで表現し、人類が地球から搾取することによって文化が失われる危険性を示唆している。
カササンペールの広大な環境インスタレーションは、ロンドンのコートールド美術館、サマセットハウス(2012年)、サンティアゴの国立美術館(2016年)、チリのアタカマ砂漠(2015年)などのスペースで制作されている。
カササンペレの作品は、ヴィクトリア&アルバート美術館(ロンドン)、サンティアゴ国立美術館、ボストン美術館、ハーバード大学美術館、ボイマンス美術館(ロッテルダム)、大阪現代美術館、パリ装飾美術館、MIC(ファエンツァ)などパブリックコレクションに所蔵されている。
◼︎ チケット(入場料=館内鑑賞):
大人 $20
シニア (65歳以上) $15
軍人 $10
学生 $8