2022年3月10日
サンディエゴ港湾局は3月8日、サンディエゴの観光拠点シーポートビレッジを含む、ダウンタウン・ウォーターフロント大型再開発計画の審査を開始した。
複数候補の中で本視されていた開発業者「1HWY1」によるプロジェクトで、総工費は約35億ドル (約4,175億円) に上るとされている。
サンディエゴ港湾局が示しているコンセプトは、ウォーターフロント (シーポートビレッジ~北マリーナパーク~USSミッドウェイ博物館の南側) 一帯を「セントラル・エンバーカデロ」(中央波止場) として整備し、新しいサンディエゴの魅力を創出するというもの。
対象域は全体で105エーカーの広さに及ぶ。
計画書によると、シアトルのスペースニードルに似た展望台を備える500フィート (約150メートル) の高層タワー、海洋研究所、人工ビーチ、水族館、美術展示場、ヨットクラブ、複数のレストランや小売店に加え、公園や遊歩道などの公共スペースが建設される予定。
また、屋内コンサート会場、5つ星ホテルからユースホステルのような簡易宿泊所の建設も含まれ、地元民と観光客のホスピタリティを充実させていく。
この計画案には解決すべき課題もある。
一つは建設予定地の地下に存在する活断層への懸念だ。
開発業社側は、潜在する地震被害の可能性を回避するために数百万ドルを投じ、断層から構造物を遠ざけるなど、安全な再開発を実現する研究を続けてきたという。
多目的高層タワー建設の具現化にも高いハードルが待ち構えている。
プロジェクトによる環境変化の影響報告がサンディエゴ港湾局に提出された後、カリフォルニア沿岸委員会 (California Coastal Commission=CCC) の承認を待つことになる。
CCC はカリフォルニアの海岸線の環境保全と美化推進の視点から、州法に基づいて沿岸部の土地利用を規制・監督する公的機関。
建造物の「高さ制限」規定の例外措置や、その地域の「シンボル性」なども審議されることから、結果の可否は予想しにくい。
過去を振り返ると、CCCから却下されたケースは多く、楽観は禁物。
大型再開発計画の重要ポイントは、一般のツーリストスポットに見られるような観光客一辺倒のアトラクションを排し、地元住民にとって愛されるスポットとなる要素を取り入れるという方針。
また、より広いスペースを確保して、コンサートやイベント会場としての機能性を向上させたいとの意向もある。
さらに、24時間営業バーを新設し、空港利用者の立ち寄りスポットとしての魅力を増大させる案も織り込まれている。
ダウンタウン・ウォーターフロント大型再開発計画は、サンディエゴ市議会、トッド・グロリア市長、サンディエゴ地域商工会議所などの支持を得ている。
同計画についての市民の反応はさまざま。
シーポートビレッジの特徴ある「(小規模) ビジネスの活性化につながる」との肯定論もあれば、SDのランドマークとして定着している穏やかに寛げる空間が「(大型再開発によって) 雰囲気が一変してしまう」という否定論も聞かれる。
第1フェーズの着工は2024~25年の見通しだが、計画案にGOサインが出されるまでには、もう少し時間を要するかもしれない。
(2022年4月1日号掲載)