2022年10月6日
スウェーデンの王立科学アカデミーは10月5日、2022年のノーベル化学賞を、狙った化合物を素早く作れる「クリックケミストリー」という手法の開発に貢献した、ラホヤ・スクリプス研究所のバリー・シャープレス教授ら3人に授与すると発表した。
シャープレス氏は2001年に野依良治氏らとともにノーベル化学賞を受賞した。
化学賞を2回受賞するのは史上2人目。
他の2人はスタンフォード大のキャロリン・ベルトッツィ教授と、デンマークのコペンハーゲン大のモーテン・メルダル教授。
授賞理由は「クリックケミストリーと生体直交化学の発展」。
クリックケミストリーは、ベルトをバックルでカチッと繋ぐように化合物を作り出す様子から名付けられた。
単純な構造を持つ分子同士を組み合わせ、目的とする有用な化合物を効率よく創出することができる。
複雑な操作を必要とせず、化学合成を専門としない研究者でも利用できることから広く活用されている。
ベルトッツィ氏は、クリックケミストリーを生体に応用した「生体直交化学」と呼ばれる手法を開発。
通常、人体に化合物を入れると様々な場所で反応が起きて悪影響も出るが、狙った場所だけで目的の反応を起こすことを可能にした。
こうした成果は医薬品や診断法の開発などへの応用が期待されており、既に抗がん剤の臨床試験も進められている。
授賞式は12月10日にスウェーデンで開かれる。
新型コロナウイルスの影響で出席が見送られた2020年と2021年の受賞者も招き、3年ぶりに対面形式で行われる。
賞金1,000万クローナ (約1億3,000万円) は3人で等分する。
*写真は、2022年ノーベル化学賞の受賞者に決定した(スクリーン左から)キャロリン・ベルトッツィ、モーテン・メルダル、バリー・シャープレスの3氏
*Picture: The Royal Swedish Academy of Sciences
(2022年10月16日号掲載)