米国の新型原油シェールオイル、生産が曲がり角に
原油価格急落で採算割れ懸念、日本経済に悪影響も
2014年12月10日
米調査会社ドリリング・インフォによると、主要12産地での11月の新規採掘認可数は、前月比34.6%減の2,373件となり、13.3%増だった10月から一変した。
原油価格の下落が続き、採掘会社が増産への投資に慎重な構えを見せていることを浮き彫りにした。
石油メジャーの一角、米コノコフィリップスは12月8日、2015年の設備投資を前年より20%減らすと発表。
シェールオイル開発地域の一部で 「かなりの量の投資を遅らせる」と説明した。
原油安につれてガスも値下がりしており、マレーシアの国営石油会社ペトロナスは、カナダでのシェールガス事業への投資決定を延期した。
シェールオイルは泥岩の一種であるシェールに含まれる原油。
技術革新により急速に採掘が進み、米エネルギー情報局 (EIA) の調べでは、米国のシェールオイル生産量は10月に日量約434万バレルと、過去4年で約5倍に増えた。
生産拡大は米国経済の成長にも貢献し、設備投資と雇用を牽 (けん) 引した。
しかし、OPECが減産を見送った11月末以降、NY・マーカンタイル取引所の原油先物相場は急落し、12月8日には約5年4か月ぶりの安値水準の1バレル63.05ドルで取引を終了。
1バレル50~70ドル程度とされるシェールオイルの 「採算ライン」に入った。
関係者の間では「60ドル台が1~2か月続けば生産調整が起こり、米国の原油生産の伸びは鈍る」 (米投資顧問会社) との見方が多い。
シェールオイル生産が減ると、需給の引き締まりから原油価格は上昇に転じる可能性がある。
日本では、円安の進行による輸入品全般の価格上昇で家計の負担増が懸念されているが、灯油やガソリンの国内価格は値下がり基調が続いている。
原油など原料価格の下落が相殺してくれている形だ。
円安が続いたまま原油価格が上昇すれば、国内のガソリンや灯油なども値上がりして家計や企業を直撃し、日本経済に冷や水を浴びせかねない。
(2015年1月1日号掲載)