トランプ大統領、ブロードコムのクアルコム買収禁じる
国家安全保障上の理由、開発競争で中国勢に遅れる懸念
2018年3月14日
トランプ大統領は3月12日、半導体大手ブロードコム (登記上の本社:シンガポール) が提案した同業クアルコム (本社:サンディエゴ) の買収を禁じると発表した。
国家安全保障上の理由だとしている。
ブロードコムは、負債を含め約1420億ドル (約15兆円) での巨額買収に乗り出していたが、米政府の介入で頓挫した。
トランプ氏は同日の大統領令で「ブロードコムが、米国の国家安全保障を損なう行動をとる可能性があると信じられる証拠がある」と主張した。
クアルコムの経営陣は昨年11月、ブロードコムから提案された買収額に不満を示し、「モバイル技術における当社のリーダーシップと成長見通しを著しく過小評価している」との声明を出すなど協議が難航。
クアルコムの経営陣が敵対的な株式公開買い付け (TOB) を行う可能性も報じられていた。
ブロードコムは買収により通信機器の「世界的なリーダー」 (ホック・タン最高経営責任者) になることを視野に入れていた。
買収に巨額資金の調達が必要となり、バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチやシティグループといった大手金融機関からの資金調達に自信を示していたが、両社が買収で合意しても、規制当局の審査が課題となるとの予測はあった。
ブロードコムはアップルの主要部品メーカーで、同社の最高経営責任者ホック・タン氏は積極的な買収戦略で知られる。
タン氏は昨年12月、トランプ大統領と記者会見を開き、登記上の本社をシンガポールから米国に戻すと発表した。
米メディアによると、買収案を審査していた米政府の対米外国投資委員会は、コスト削減で知られるブロードコムが、クアルコムを買収すれば、研究開発が滞り、次世代の移動通信システムの開発競争で、華為技術 (ファーウェイ) といった中国勢に劣る恐れがあると懸念していたという。
(2018年4月1日号掲載)