2022年6月20日
世界保健機関 (WHO) は6月17日、現行の新型コロナウイルスワクチンは、オミクロン株やその派生型の重症化防止や死亡率低下にも極めて有効だとして、接種率の向上に引き続き取り組むよう求める声明を発表した。
特に、追加接種は効果が大きいとして推奨している。
現在使われているワクチンは、初期に中国で流行した新型コロナウイルスを基に開発されており、1~2回で接種完了となる。
昨年11月に「懸念される変異株 (VOC)」に指定されたオミクロン株に対しては、通常の接種では他のVOCと比較して重症化防止効果が低かったが、追加接種すると、これまでと同様の高い効果が確認されたとしている。
WHOは今後も新型コロナウイルスの変異は続く可能性が高いと指摘。
重症化する危険性が高い高齢者や基礎疾患がある人に対するワクチン接種率の向上を改めて訴えた。
京都大の西浦博教授 (感染症疫学) らのチームは、新型コロナウイルスの変異株の中で、オミクロン株のように従来株やアルファ株などとは性質が異なり、今後も数年に一度の割合で流行に大きな影響を与えるウイルスが出現するとの試算をまとめている。
流行を抑える切り札であるワクチンは従来株に合わせて開発されており、オミクロン株に対して効果が弱まることが分かっている。
西浦氏は「大きな変異を持ったウイルスが数年に一度のペースで現れるのであれば、変異株に合わせたワクチン開発も有効だろう」としている。
オミクロン株の遺伝情報には、アルファ株、デルタ株と比べて大幅に異なる変異があり、重症化しにくいが感染のスピードが速いなど性質も大きく変化した。
チームは、中国・武漢を起源とする従来株が2019年11月に発生し、2021年11月にオミクロン株が現れたと仮定。
さらに5か月が経過した時点で新たな変異株が発生していないという前提で、オミクロン級の大幅な変異を持ったウイルスが、どれくらいの頻度で現れるかを試算した。
不規則に出現する場合や感染者数に比例して起こりやすくなる場合など3通りの条件を設定。
その結果、最も現状を説明できたのは不規則に発生するケースで、平均で約28か月ごとに出現するとの結果が得られた。
1年間の確率に換算すると約35%で、数年に一度のペースだった。
新たな変異株がどのような性質を持つかは予測できないが、オミクロン株のように世界で主流になる可能性はあるという。
また、西浦氏は「感染者数が世界で爆発的に増えると確率が高くなることにも注意が必要だ」としている。
米国では6月20日、サウスカロライナ州など一部の州で、生後6か月以上の幼児への新型コロナワクチンの接種が始まり、全年齢層が対象となりつつある。
ファイザー製は生後6か月から4歳を対象に成人の1/10の量を3回接種。
モデルナ製は生後6か月から5歳を対象に成人の1/4の量を2回接種する。
ただ、世論調査では、5歳未満の子供を持つ親が 「積極的に接種させる」 と回答したのは全体の18%にとどまっている。
6月19日時点のデータによると、5歳以上のサンディエゴ郡在住者のうち297万人以上 (約94.4%) が少なくとも部分的にワクチン接種を受けている。
この年齢層のうち263万人以上 (約83.6%) が完全に予防接種を済ませた。
ブースター接種回数は合計1,358,992回で、これは接種対象となっている2,316,581人の58.7%に当たる。
(2022年7月1日号掲載)