2023年8月10日
世界保健機関 (WHO) は8月9日、中国や米国、韓国、日本などで感染例が増えている新型コロナウイルスのオミクロン株派生型「EG.5」を注目すべき変異株 (Variants of Interest=VOI) に指定した。
重症化率の変化は確認されておらず、公衆衛生上の危険性は低いと見ているが、免疫を擦 (す) り抜けるなど感染力が強くなっているため、警戒を呼びかけている。
VOIは、最も警戒度の高い懸念される変異株 (Variants of concern=VOC) より1段階低い位置付け。
EG.5はオミクロン株派生型XBBの系統で、VOIにはXBB.1.5とXBB.1.16も既に指定されている。
EG.5が世界全体の感染例に占める割合は6月19~25日には7.6%だったが、約1か月後の7月17~23日には17.4%にまで上昇。
8月7日時点でEG.5は51か国で確認され、うち中国が30.6%で最も多く、次いで米国が18.4%、韓国が14.1%、日本が11.1%を占めている。
ただし、テドロスWHO事務局長は、新型コロナの緊急事態宣言を5月5日に終了後、データを提供する国が急速に減ったと指摘。
実態把握の困難さが懸念材料だ。
このためテドロス氏は8月9日、7月に初開催された新型コロナの再検討委員会の報告を踏まえ、検査態勢の維持や、死者数やウイルスの遺伝子情報の報告継続などを加盟国に求める勧告を出した。
勧告は2025年4月末まで有効となっている。
感染者数と入院患者数、SD郡も漸増傾向、9月に新ワクチン?
アメリカ疾病予防管理センター (CDC) の最新データによると、全米のトレンドとして、7月初めから、オミクロン株派生型EG.5の感染者数と入院患者数が急増中。
これは数か月にわたる安定期を経てのことだ。
サンディエゴ郡内でも新型コロナウイルス感染者の増加傾向が確認されている。
サンディエゴを拠点とする家庭医学専門家アビソラ・オルレイド博士は、地元テレビ局のインタビューで、入院患者数は微増であり、多くの病院が十分な収容能力を有していると指摘。
しかし、バケーション期の夏には多くの人々が集まり、旅行する機会も増えることで、今後はケース増の曲線が上昇するとの見解を示した。
特に、映画やコンサートに訪れる際にマスクを着用していないことが、大きな要因になっているという。
また、オミクロン変異体が進化し、感染が広がりやすくなっている現実にも触れ、新しい派生型EG.5が米国で中心的な亜種になりつつあると警告。
8月8日現在、SD郡でEG.5はまだ確認されていないが、その到来は時間の問題とみている。
公衆衛生保持を目的に、緊急事態宣言解除後も、新型コロナの有病率を監視する手段として下水検査が継続されている。
また、現行のワクチンはその保護効果が確認されており、アメリカ食品医薬品局 (FDA) は新しいワクチン使用も承認済み。
ただ、供給についての具体的な時期は発表していない。
既存の新型コロナワクチンまたはブースターショットが必要な住民に対して接種が推奨されている。
FDAが最近承認した新しいワクチンの供給開始は9月中旬~下旬になりそう。
保健当局はマスク使用が感染リスクの低減に効果的であると改めて強調している。
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(2023年9月1日号掲載)