2023年12月3日
米主導の国際月探査「アルテミス (Artemis) 計画)」の目玉となる有人月面着陸について、航空宇宙局 (NASA) が目標とする2025年12月の実現は困難との報告書を政府監査院 (GAO) が12月3日までにまとめた。米宇宙企業による着陸船や宇宙服の開発が遅れ、2027年前半にずれ込む恐れがあるとした。
NASAは当初2028年を目標としたが、トランプ前政権が2期目の実績とすることを狙って2024年に
前倒しした。
2021年に政権交代した後、バイデン政権は1年だけ遅らせた。
NASAの担当者らは開発計画の再検討を進めているという。
有人月面着陸は、まず地球を周回する燃料基地を飛ばす。
その後に着陸船スターシップ (Starship) が無人で出発し、燃料基地で補給を受けてから月の軌道上で待機する。
飛行士は別の宇宙船オリオン (Orion) で月に向かい、スターシップに乗り換えて月面に降りるという複雑な計画だ。
スターシップはスペースX (SpaceX) が担当しているが、基となる機体は今年4月と11月の飛行試験を完遂できなかった。
燃料補給など次の段階に進めずにいる。
一方、NASAのオリオンは昨年、月との間を行き来する無人試験に成功した。
NASAはこれまで宇宙機の開発から打ち上げまでに平均7年8か月を要している。
今回与えられた時間は6年7か月で、報告書は「有人飛行の複雑さを考えると現実味がない」と指摘した。
宇宙服はNASAが14年の歳月と600億円をかけて開発を試みたが断念し、米宇宙企業アクシオムスペース (Axiom Space) に引き継いだ。
報告書は、設計完了までに生命維持機能の増強など相当な作業が残っているとした。
(2023年12月16日号掲載)