「国境閉鎖」に動揺広がる
分断懸念、双子の都市
2019年4月7日
「国境の危機なんてでたらめ」「私たちの声を聞いて」。
トランプ大統領が4月5日に視察した人口約4万人の国境の町カリフォルニア州カレキシコは、トランプ氏による 「国境閉鎖」宣言で揺れていた。
隣接するメキシコ側のメヒカリ市とは、お互いの市民が通勤や通学で行き交う「双子の都市」の関係。
生活が分断されることへの懸念が広がる。
「メヒカリには親戚も多い。私たちを国境で分断することはできない」。
女子大生 (18) が力を込めた。
トランプ政権が「壁」だと誇る全長約3.6キロの国境のフェンス付近で約200人が抗議の声を上げた。
(写真右) 約3,200キロに上る米国とメキシコの国境には、他にも両国の住民が生活を依存し合う地域がある。
特にカレキシコとメヒカリは、どちらの名もカリフォルニアとメキシコの一部が由来となっており、歴史的に関係の深さで知られる。
トランプ氏が国境閉鎖の可能性に言及したのは3月末。
経済界から甚大な影響が生じるとの反発が相次ぎ主張をトーンダウンさせたが、カレキシコではなお不安が漂う。
「保護者から問い合わせが殺到している」と懸念を示すのは、国境近くの学校の男性校長 (40)。
在学生約300人のうち約8割がメヒカリの越境通学者だ。
カレキシコには同じような学校が数校あり、出入国管理施設は毎朝、越境する生徒らでごった返すという。
校長は「国境に壁を造っても、薬物や犯罪者の越境状況に変化はない。私たちはワシントンの政治ゲームに翻弄されている」と不満げだ。
米政府に対し、壁を造るよりも優先すべきことがあるとの声も上がる。
メヒカリは外資企業に関税を優遇する保税加工区 (マキラドーラ) に多国籍企業が進出し、人口は約100万人に上る。
だが環境規制はずさんで、工場廃棄物や生ごみの垂れ流し状態という。
「深刻なのは環境問題だ」。
会社員のアンヘル・エスパルザさん (30) は、メヒカリから流れる川の汚染や悪臭を解消するために、メキシコ側と協力すべきだと訴えた。
抗議行動に対し、大勢の警官が武装して警備に当たるなど、国境地帯は物々しい雰囲気。
「壁」の向こう側からはメヒカリの住民が様子をのぞいている姿が見えた。
(カレキシコ共同)
(2019年5月1日号掲載)