成長の陰に知日派の貢献
米日本語クイズ大会27年
2019年5月28日
米国の高校生が日本語力をクイズで競う「ジャパンボウル」の決勝大会が4月中旬、首都ワシントン近郊で開かれ、全米から200人を超える生徒が日ごろの研鑽 (さん) 成果を披露した。
27回目を迎えた大会は、日米交流の深化を背景に平成の時代を通じて成長。
その陰には、太平洋戦争中に日本語を学んだ元米海軍要員の女性や日米関係の発展に人生を捧 (ささ) げてきた知日家らの貢献がある。
「福沢諭吉がつくった大学は?」「ことわざの『七転び八起き』を使って例文を作りなさい」。
最もやさしい「レベル2」の問題例だ。
予選を勝ち抜いた30校の生徒の中には日本人が戸惑うほどの問題にすらすら答える姿も見られた。
ジャパンボウルが初めて開かれたのは1992年。
大会会場近くにある高校で日本語教師を務めた女性ジーン・モーデン氏の発案だった。
第二次大戦中に日本語を学び、海軍情報要員として傍受した旧日本軍の通信内容の翻訳などを手がけた。
今は首都近郊のアーリントン国立墓地に、夫と共に眠る。
「敵性言語として日本語を勉強したモーデン氏が始めたことは感慨深い。
私たちには彼女の遺志を継ぐという使命感がある」。
20年以上にわたり問題作りなどで大会に関与するマーガレット・ブリアさんが語った。
夫で元駐日首席公使のウィリアム・ブリア氏も毎年出席している。
大会は1年でワシントンに最も人が集まる「全米桜祭り」に欠かせない日米交流のシンボル的な催しに成長。
モーデン氏には生前、日本から勲五等宝冠章が贈られた。
国際交流基金の調査では日本語を学ぶ米国人は2015年に約17万人と2012年比で10%近く増えた。
中国語熱などに押され日本語を学ぶ人が減ると考えるのは誤解だと指摘するのは、元国務省日本部長のジョン・マロット氏。
「言語教育は学問的であるより実践的であるべきだというモーデン氏の考えが、この大会に貫かれ成功している」と話した。
(2019年6月16日号掲載)