Thursday, 28 March 2024

ニューヨークで静岡の劇団に高評価

ニューヨークで静岡の劇団に高評価

ギリシャ悲劇『アンティゴネ』、東洋的に

2019年10月15日

静岡県舞台芸術センター (SPAC) がニューヨークで上演したギリシャ悲劇『アンティゴネ』が、高い評価を受けた。

大胆な東洋的な演出が注目され、10回公演の入場券は最終日の10月6日まで早々に完売。

世界最高水準の舞台芸術作品がひしめく米国の最大都市で、日本の現代劇としては異例の人気を博した。

大きな舞台には一面に水が張られ、役者らは着物を思わせる衣装。

劇の始まりと終わりを告げるのは、筏 (いかだ) に乗った僧侶だ。

緩急を付けた役者の動きや打楽器の音色、巨大な影を壁に浮かび上がらせる照明が幻想的な世界をつくる。

せりふはほぼ全て日本語で、英語の字幕が表示される。

9月30日の公演後は約1,000人の観客がほぼ総立ちとなり、拍手がしばらく鳴りやまなかった。

映像関連の仕事をしているクリスティン・フォールさん (49) は「うっとりした。こんな劇は初めて」と驚いた様子だった。

9月25日の初演後、普段は辛口のニューヨーク・タイムズ紙が「優美で瞑想的。心を捉えて離さない」と絶賛したころから人気が急上昇。

入場券の転売サイトでは正規価格の6倍を超える1,100ドル (約11万円) の値段が付いた。

SPACの芸術総監督の宮城聡さん (60) が演出を手掛けた。

主人公の王女アンティゴネの考えに、死者を敵味方に分けない日本の仏教的な考え方を重ねたという。宮城さんは「多様な背景を持つニューヨークのお客さんに感動してもらえたことは、今後に向け大きな励みになる」と喜んだ。

宮城さんのアンティゴネは2017年、世界最大の舞台芸術祭、フランスのアビニョン演劇祭で上演され高評価を得た。

今回は米各地でさまざまな日本文化を紹介する行事の一環として公演を続けている。


(2019年11月1日号掲載)