2022年5月27日
冷酷無比な惨劇の舞台へと一変した米南部テキサス州ユバルディは、緑豊かな人口約16,000人の長閑 (のどか) なコミュニティーだった。
18歳容疑者の凶行によって、地元住民らは深い悲しみに暮れ、事件現場の小学校には無慈悲に奪われた多くの若き命を悼む色とりどりの花が手向けられた。
同市内のロブ小学校で児童19人と教師2人の21人が殺害された5月24日の銃乱射事件で、サルバドール・ラモス容疑者 (18) =当局により射殺=は、教室に入れないよう立てこもりって、犯行に及んだとみられることが分かった。
容疑者が学校に侵入してから殺害されるまでの時間は40分~1時間とされ、遺族らからは警察が迅速に対応しなかったと批判する声も出ている。米メディアが事件の翌日に伝えた。
テキサス州の治安当局幹部は、容疑者が教室内に侵入した後「ドアが開かないようにして姿を隠し、中にいた児童や教師に向け銃撃を始めた」と語った。
亡くなった児童らはいずれも同じ教室にいて犠牲になったという。
現場の教室にいながら一命を取り留めた女子児童 (11) が、当時の様子をCNN-TVに証言した。
撃たれた級友の血を体に塗って死んだふりをし、九死に一生を得たという。
事件前、女児らは教室でアニメ映画を見ていた。
授業が終わった頃、銃を持った人物が校内に侵入したとの知らせが届いた。
教師が鍵を閉めようと急いでドアまで行くと、容疑者は既に教室前にいて「おやすみ」と告げて教師を撃った。
容疑者はもう1人の教師や子供にも発砲。
隣の教室に移動すると、中からは叫び声と銃声が響いた。
銃声が止んだ後、容疑者は「悲しげな曲」を大音量で流していた。
女児と友人は撃たれた教師の携帯電話をつかみ、緊急通報用の911番に連絡。
「来てください、トラブルです」と助けを求めた。
容疑者が戻ってくるのを恐れ、側 (そば) で絶命していた級友の血を体中に塗りつけて、犠牲者のふりをしたという。
女児は、学校での銃撃事件を生き延びるというのはどのような経験かを知ってもらい、同じ悲劇が繰り返されないようにと考えて証言したと語った。
娘を失った男性は、事件の報告を受けて小学校に駆けつけたが、警察官がまだ建物の外に待機していたと証言。
「(警察は) 準備できていなかった」と語った。
「中に入って!」と当局者に向かって叫ぶ女性らの姿を目撃した近隣住民もいる。
一方、テキサス州のアボット知事は25日の記者会見で、対応に当たった治安当局者は「ただ命を救うためだけに銃弾に立ち向かい、驚くべき勇気を示した」と称賛した。
ユバルディでは5月25日、追悼集会が開かれ、千数百人が参加して児童と教師の突然の死を悼んだ。
(2022年6月16日号掲載)