2022年6月6日
発熱や発疹が現れる動物由来のウイルス感染症「サル痘」の患者が欧米などで増加し、世界保健機関 (WHO) などによると約30か国で確認された。
欧州疾病予防管理センター (ECDC) は6月3日、従来発生してきたアフリカの流行国以外で患者数が約760人に達したと発表。約10日間で3倍超に膨らんだ。
死亡例はないもののWHOは「人から人への感染が進んでいるようだ」とし、患者や接触者の早期発見と隔離を各国に促した。
6月3日現在、ECDCによると最多は英国の200人。
スペイン149人、ポルトガル124人と続く。
北米ではカナダ51人、米国20人。
日本では確認されていない。
米疾病対策センター (CDC) の発表では、6月6日の時点で、カリフォルニア州内の患者はサクラメント郡3人+推定患者1人、サンフランシスコ郡1人、ロサンゼルス郡1人で、擬似症患者が認定されれば計6例となる。
サル痘は体液や飛沫などを介して感染するが、重症化の要因や感染源となる動物の種類など未解明の点が多い。
欧州の専門誌が6月2日に掲載した英国の報告は、流行国への渡航歴がない患者は30代の男性が中心で、性交渉などを通じた感染が疑われるとした。
CDCは3日の電話記者会見で、発症初期に現れる発熱がない例などを紹介。
ポルトガルの論文は、欧州で4月初めからウイルスが広がっていたと推定した。
イタリアの論文は、患者の精液からウイルスのDNAが検出されたとし「感染力を持つウイルスが精液中にある可能性」に触れた。
散発的に発生する程度だったアフリカでも近年流行が深刻になっている。
今年の患者は5月中旬までに1,400人を超え、66人が死亡。
コンゴ (旧ザイール) の研究者は、サル痘の仲間の天然痘が根絶され、ワクチン接種の必要がなくなった若い世代に感染が広がったと指摘した。
WHOは3日まで専門家会合を開催。
「流行国の状況改善は、他の国々で持ち込みや発生を抑えるためにも重要だ」とし、各国が協調して研究を進めることで合意した。
(2022年6月16日号掲載)