2022年6月17日
米国の中央銀行に当たる連邦準備制度理事会 (FRB) は6月15日、連邦公開市場委員会 (FOMC) で、主要政策金利の誘導目標を0.75%引き上げ、1.5~1.75%とすることを決定した。
1994年11月以来、27年7か月ぶりの異例の利上げ幅で、通常の3倍。
歯止めが利かない物価高の抑制へ金融引き締めを一層加速し、年末には政策金利が3.4%に達する見通し。
利上げは3会合連続。
5月の消費者物価指数が約40年間で最大の上昇率となり、利上げ幅を前回より急遽 (きょ) 拡大させた。
米国債など保有資産の縮小も続け、市場に出回る資金を減らす。
大規模な金融緩和を続ける日銀との違いがさらに鮮明となり、日米の金利差拡大によって円安ドル高が促される構図が強まる。
パウエル議長は記者会見で0.75%の利上げを「通常のものではない」 としつつ、7月26、27日の次回会合でも0.5%か0.75%の大幅利上げを連続実施する含みを持たせた。
急速な引き締めは物価抑制には必要だが、景気後退を招く危険性もある。
議長は「経済減速の幅広い兆候はない」と述べ、0.75%は異例の措置で、物価動向に応じて「機敏に対応する」と説明。
景気を傷つけずに物価を抑えるソフトランディング (軟着陸) は可能だとした。
FRBは短期金利の指標フェデラルファンド (FF) レートの誘導目標を3月に0.25%引き上げ、事実上のゼロ金利を解除。
5月には0.5%の利上げを実施。
議長は5月の会合後、6、7月も0.5%利上げの意向を発信し続けたが、その後の物価高加速で方針変更を迫られた。
FOMCが示した最新予測では、急速な利上げによって政策金利は2022年末に3.4%、2023年末には3.8%にまで上昇。
これが今回の利上げ局面の「天井」となる可能性がある。
2024年末は3.4%へと利下げを見込んだ。
2022年10~12月期の物価上昇率は前年同期比5.2%と高止まりし、実質国内総生産 (GDP) は1.7%増に鈍化する見通しだ。
NY株、1年5か月ぶり、一時3万ドル割れ
6月16日のニューヨーク株式市場のダウ工業株30種平均は大幅反落して始まり、前日からの下げ幅が一時800ドルを超え、節目の3万ドルを割り込んだ。
3万ドルを下回るのは、昨年1月下旬以来、約1年5か月ぶり。
FRBによる大幅利上げが景気後退を招きかねないとの懸念が高まり、売り注文が膨らんだ。
欧州市場も軒並み下落。
16日に反発した東京市場の17日の取引にも影響を与えた。
FRBは15日、記録的な物価高を抑えるため、FOMCで大幅利上げを決めた。
16日にはイングランド銀行 (BOE) やスイス国立銀行 (SNB) も利上げを発表。
世界各国の中央銀行が積極的な金融引き締めに動く中、FRBが景気を傷つけずに物価を抑える経済のソフトランディングを実現するのは難しいとの見方が広がった。
(2022年7月1日号掲載)