2023年1月4日
2023年の世界経済は、ロシアのウクライナ侵攻や物価高による影響が続き、各国で低成長に陥る恐れが強まっている。
経済を牽 (けん) 引してきた米国は利上げにより景気後退の懸念が高まっているほか、中国も新型コロナウイルス感染拡大の影響で経済は疲弊しており、高成長を期待できない。
国際通貨基金 (IMF) のクリスタリナ・ゲオルギエワ専務理事は、1月1日放送のCBS-TVで「世界の多くにとって、今年はこれまでよりも厳しい年になりそうだ」との見方を示した。
IMFは2022年10月公表の見通しで2023年の世界全体の実質成長率を2.7%に下方修正したが、今月さらに引き下げる可能性がある。
世界銀行は2022年6月時点で3.0%と予測、物価高騰と景気停滞が同時に起こるスタグフレーションの苦しみが「数年続く恐れがある」と警告している。
低迷の主因は、米連邦準備制度理事会 (FRB) などの先進国の中央銀行による急速な利上げだ。
米国の政策金利は2022年12月時点で4.25~4.5%に上昇。
消費者は借り入れが難しくなり、住宅や中古車の販売に悪影響が出ている。
米国の物価上昇率は依然として高い水準で、FRBは今年も引き続き景気抑制につながる利上げを視野に入れている。
米金融大手のJP モルガン・チェースは、2023年の米国について0.5~1.0%の低成長を見込む。
中国も経済運営に腐心している。
昨年12月に感染を徹底的に抑え込む「ゼロコロナ政策」を放棄し、新型コロナ対策として義務付けてきた入国時の集中隔離を1月8日から撤廃した。
中国共産党中央財経委員会・弁公室 (事務室) の韓文秀 (かん・ぶんしゅう) 副主任は「2023年の上半期、特に4~6月期には経済活力が回復する」と述べた。
野村ホールディングス傘下の野村国際 (香港) の陸挺 (りくてい)・中国首席エコノミストらは2023年の成長率を4.8%と予測した。
ゼロコロナで苦しんだ2022年の2.8%から回復すると見込んだ。
ただ、不動産大手の開発資金難による混乱が続く可能性や、消費者側に住宅購入の意欲と財力が不足しているとの問題を指摘した。
欧州は、牽引役のドイツがロシアからの天然ガス供給停止に伴うエネルギー高の不安を抱える。
英国は増税と歳出削減による財政再建を目指しており、綱渡りの経済運営となりそうだ。
(2023年1月16日号掲載)