2023年7月19日
7月18日に閉幕した20か国・地域 (G20) 財務相・中央銀行総裁会議はウクライナに侵攻するロシアと日米欧の対立から、またも共同声明の採択を見送った。
半導体をめぐる米国と中国の睨 (にら) み合いで亀裂は一段と広がり、世界経済の足枷 (あしかせ) にもなりかねない。
議長を務めたインドのニルマラ・シタラマン財務相は閉幕後に記者会見し、ロシアのウクライナ侵攻に関する表現をめぐり、参加国の合意が得られなかったと説明した。
政策協調の場としての機能不全が決定的となり、9月9日、10日に開催する首脳会議 (G20サミット) に重い課題を残した。
▽締め出し
G20開幕に先立つ7月16日。
先進7か国 (G7) は財務相・中銀総裁会議を開き、ロシアの資産凍結を続けることを確認した。
凍結資産をウクライナへの賠償に充てる案が欧米で浮上しており、実現すればロシアの一層の反発は必至だ。
5月のG7首脳会議 (広島サミット) 後、一旦は融和方向へ進むかに見えた米中関係も一筋縄ではいかない。
中国は今月、半導体の材料に使う希少金属のガリウムとゲルマニウムの関連品目の輸出規制を発表した。
世界の半導体生産への悪影響が懸念される。
一方、米政府が最近多用するようになった用語が “friend-shoring” (フレンド・ショアリング)。
輸出規制に加え、半導体の供給網を同盟国と再構築することなどを指す。
「中国を切り離すのではなく、経済を多様化する」 (財務省高官) と言うが、締め出しの意図が透けて見える。
ジャネット・イエレン米財務長官はG20閉幕後、ベトナムを訪問して協力を求める。
▽バランス
日本は半導体の輸出規制で米国と足並みを揃える。
沖縄県尖閣諸島を巡る対立を背景に中国からレアアース (希土類) の対日輸出を制限された経緯もあり、中国に依存しない供給網の構築も迫られている。
ただ、米国と異なる事情もある。
新型コロナウイルス感染拡大前の2019年。
訪日客3,188万人のうち中国からは959万人を占めた。
旅行業界は中国人客の回復に期待を寄せており、外交関係の悪化は避けたいシナリオだ。
日本政府関係者からは「中国に依存しない供給網の構築は安全保障上重要な、最先端の製品に限った話」「世界経済のためにも、日本が各国間でバランスを取ることが必要」といった声が上がる。
国際通貨基金 (IMF) はG20開幕前に発表した文書で「G20が協調すれば、現在の困難な経済の状況を乗り切れる。
課題解決には分断に抵抗することが不可欠」と強調したが、この訴えはG20に届かず、対立の構図が続いた。
議長国インドのシタラマン財務相は閉幕後の記者会見で、ロシアがウクライナ産穀物の輸出合意を離脱したことに対し、複数の参加国が非難したと述べた。
(2023年8月1日号掲載)