2022年9月11日
米国が主導する新経済圏構想「インド太平洋経済枠組み (IPEF)」の閣僚級会合は9月9日、ロサンゼルスで2日間の討議を終え、日本を含む参加14か国が正式交渉入りを宣言した。
交渉4分野の目標を示す閣僚声明を採択し、半導体や鉱物資源を念頭に、重要物資のサプライチェーン (供給網) 途絶への備えを強化するほか、脱炭素化や食料安全保障などを推進することに合意。
覇権を拡大した中国に対抗する連携策が始動した。
5月のIPEF発足以降、対面では初の閣僚級会合。
13か国は4分野の全てに加わるが、インドは現時点で利点が見出せないとして「貿易」だけ参加しなかった。
協議を加速させ、来年初めに公式の閣僚級会合を再び開催。
日米はロシアの脅威も踏まえ、ルール作りなどの成果を早期に出す道筋を描く。
日米や東南アジア諸国など14か国の国内総生産 (GDP) の合計は世界の4割を占める。
西村康稔経済産業相は会合後の記者会見で「米国がインド太平洋地域への経済的な関与を再び明確にした。非常に重要だ」と述べた。
4分野は ①貿易、②供給網、③クリーン経済、④公正な経済 ―― で各国が参加の可否を選べる仕組み。
柱となる供給網では、新型コロナウイルスのような感染症流行や紛争といった混乱に加え、他国への資源、部品供給を制限する動きも想定し、影響抑制で協力する。
半導体などの供給途絶に備え、各国に窓口となる調整役を設ける。
政府間で情報収集・連絡することで早期の復旧を目指す。
クリーン経済では化石燃料への依存を減らす技術や製品の普及、資金支援を推進。
貿易では通関手続きの円滑化や労働者の権利保護に加え、農産品の輸出制限の回避を明記した。
公正な経済では汚職や脱税の防止に取り組む。
ジナ・レモンド米商務長官は会見で「年末までに高官や閣僚による協議を積極的に行う」とも述べ、供給網をめぐる交渉が先に進む可能性を示した。
IPEFは、対中国を念頭にバイデン大統領が提唱した枠組み。
ただ、環太平洋連携協定 (TPP) のような関税引き下げは、米国内産業に配慮して議題から外れており、経済効果は未知数との見方も消えていない。
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*IPEF:米国が主導する「インド太平洋経済枠組み」の略称。「Indo-Pacific Economic Framework」の頭文字をつなげたもので、「アイペフ」と読む。日米や韓国、インド、オーストラリアのほか、シンガポール、インドネシアなど計14か国が参加する。米国は巨大経済圏構想「一帯一路」などで影響力を増す中国への対抗軸を構築するとともに、環太平洋連携協定 (TPP) からの離脱などにより、低下した同地域での影響力を回復したい狙いもある。
(2022年10月1日号掲載)