2023年2月1日
世界保健機関 (WHO) のテドロス・アダノム事務局長は1月30日、新型コロナウイルス感染症は依然として「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」に相当するとの判断を明らかにした。
2020年1月30日に出された緊急事態宣言は、4年目に入ることになった。
緊急事態宣言は、感染症などが各国に保健上の危険をもたらす事態や国際的な対策の調整が必要と
判断される場合に、WHOが出す最高度の警告。
宣言後、3か月ごとに現状分析や宣言継続の是非を検討する緊急委員会が開かれ、1月27日の会合
結果を受け、テドロス氏が宣言継続を決めた。
緊急委は、新型コロナは他の呼吸器系疾患と比べても依然死者が多く「危険な感染症であり続けて
いる」と指摘。
高齢者や持病がある人など感染時の危険性が高い人々や発展途上国の人々にワクチン接種が十分に進んでいないことのほか、新変異株の出現など先行きの不透明さに懸念を示した。
重症化率の低下などから、世界的大流行 (パンデミック) は収束に向けた「移行期」にあるとしながらも、新型コロナは根絶されることはおそらくなく、死亡率低下など被害軽減に注力し続けていくべきだとし、宣言終了が実現した場合でも、世界的な警戒態勢を維持するために「再検討委員会」を設置し、勧告を常に出せるような体制を提唱した。
WHOは1月27日に中国から新たに報告された分を加えた速報値を更新し、感染者は7億5,250万人、死者は680万人超に急増した。
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一方で、バイデン政権は1月30日、新型コロナウイルス感染拡大に伴う国家非常事態宣言を5月11日に解除する方針を明らかにした。
解除は3年ぶり。
無償提供してきたワクチンや検査、治療薬は医療保険を使う形になり、3,000万人に上る保険未加入者への対応が課題となる。
保険料の上昇など新たな負担が生じる可能性もある。
食品医薬品局 (FDA) はワクチン接種を基本的に年1回、秋に集中実施する方式への転換を検討している。
(約4,000円) から4倍程度に跳ね上がるとの観測もある。
大半の人は既に感染やワクチン接種を経験しており、最新の変異株に対応する製品を毎年1回接種し、抵抗力を回復させればよいとみている。
季節性インフルエンザの予防接種に似た運用で、高齢者の入院や死亡を減らし、若い世代でも発症や通院を抑える効果を見込む。
FDAの外部有識者委員会で意見を聞き、その後に方針を決定する。
現在は臨床試験結果に従い、最初の2回は流行当初の株に対応した製品、3回目以降はオミクロン株に対応した製品を使っている。
今後は接種回数による製品の区別をなくし、簡素化を図る。
打ち間違いを減らし、情報提供もしやすくなるとしている。
ウイルスの性質が十分に解明されない中、危険な変異株の出現や局地的な患者急増を覚知する仕組みの構築も課題。
幅広い変異株に対応でき、効果が長持ちするワクチンの開発も望まれるが、共和党が下院多数派を握る議会が研究費の支出を縮小しかねない。
共和党議員らは下院で非常事態を即時解除させる法案を提出し、社会の正常化を急ぐ構えを見せる。
マスク着用義務が解除されるなど行動規制は既に大幅緩和されており、高齢者ら重症化リスクの高い人たちに伝染しないための啓発にも工夫が求められそうだ。
(2023年2月16日号掲載)