2022年10月4日
共和党のトランプ前大統領が党上院トップのミッチ・マコーネル院内総務 (*写真) に「死の願望がある」とソーシャルメディアに投稿し、脅迫と受け取られかねない内容に党内から批判が出ている。
マコーネル氏は、トランプ氏が2020年の大統領選に勝利したとする根拠のない陰謀論に組しない立場。
中間選挙が11月に迫る中、双方の確執が深まっている。
上院選ではトランプ氏推薦候補の資質が疑問視され、当初有力視された共和党による過半数奪還が危ぶまれている。
岩盤支持層を抱えるトランプ氏と、共和党穏健派や無党派層の取り込みを重視するマコーネル氏の対立が激化すれば、
終盤戦情勢にも影響しかねない。
トランプ氏は9月30日、自身が反対する民主党提出の法案をマコーネル氏が支持していると批判。
「中国を愛する妻に助言を求めなければならない」と投稿し、マコーネル氏の妻で、トランプ政権の運輸長官を務めた
台湾出身のイレーン・チャオ氏も中傷した。
チャオ氏はトランプ氏の支持者が2021年1月に連邦議会議事堂を一時占拠した事件に抗議し、辞任した。
トランプ氏が問題視した法案は不明だが、連邦政府支出を12月まで賄う「つなぎ予算法」などを指しているとみられる。
マコーネル氏を「脅迫」 (ワシントン・ポスト紙) し、チャオ氏の出自を侮辱した投稿に対し、トランプ政権で広報部長を務めたアリサ・ファラー氏はツイッターで「もはや、人種差別主義を隠そうとすらしていない」と非難。
「共和党が目を覚まし、より良い人物を求めなければ、大統領選の最有力候補」はトランプ氏になると警告し、別の候補者を探すべきだと訴えた。
上院奪還に危機感、候補の「資質」問われ苦戦
中間選挙で野党共和党が目指す上院 (定数100) の奪還が危ぶまれている。
記録的なインフレでバイデン大統領 (民主党) が支持率低迷にあえぐ中、優位に選挙戦を進めるはずが、激戦州でトランプ前大統領の推薦候補が失言やスキャンダルで苦戦。
候補の「資質」を疑問視する共和党幹部とトランプ氏の舌戦に発展している。
「下院の方が過半数奪還の可能性は高い。
上院は候補者の資質が結果を左右する」。
共和党上院トップのマコーネル院内総務は厳しい情勢認識を示した。
上院選は、改選を迎える約3分の1の議席と補欠選挙1議席を加えた計35議席をめぐって争われる。
現在は民主、共和両党が50議席ずつ。
中間選挙は政権与党に逆風となる傾向が強く、共和党有利との見方も出ていた。
だが、もともと共和党地盤で奪還が有力視されたジョージア州では、トランプ氏推薦の共和党新人が気候変動をめぐる不可解な発言などで失速。
各種世論調査で民主党現職にリードされる。
共和党現職が引退するペンシルベニア州でも、トランプ氏推薦でテレビタレントの共和党新人が民主党新人に先行を許している。
知名度優先でトランプ氏が推薦に踏み切ったため、共和党支持層をまとめ切れていないのが一因とみられる。
ウィスコンシン州でもトランプ氏の選挙をめぐる陰謀論を支持する共和党現職が民主党新人に後れを取り、民主党に議席を奪われかねない情勢となっている。
自身の推薦候補の資質を批判されたトランプ氏はSNSでマコーネル氏を「ダメな政治家」と罵 (ののし) り、「一生懸命戦っている共和党候補を貶 (おとし) めている」と非難した。
“場外乱闘” の様相も呈している。
*Picture:© Christopher Halloran / shutterstock.com
(2022年10月16日号掲載)