2021年5月16日
新型コロナウイルス対策でマスク着用の徹底を呼びかけてきたバイデン政権が、ワクチン接種完了を条件に原則不要と方針を急転させ、疑問の声が出ている。
政権には、根強い不信のあるワクチン接種を促す狙いもあるとみられるが、5月中旬も1日の新規感染確認は3万人を超えた。
政権の方針に従うかどうかをめぐり、地域によって対応が割れている。
「大統領は3月に、全成人の接種前のマスク着用義務撤廃は野蛮だと言っていたではないか。それがどうして?」
5月14日のサキ大統領報道官の記者会見では根拠を問う質問が続出した。
同日時点の成人接種率はまだ約46%。
サキ氏は「疾病対策センター (CDC) がデータに基づいて出した指針だ」と釈明した。
CDCは5月13日、接種完了から2週間経過した人は原則マスクを不要とする指針を発表。
米メディアによると、指針には政権内でも驚きの声が出たが、バイデン氏は歓迎。
ホワイトハウスでは14日、バイデン氏らがマスクなしで勤務を始めた。
CDCは米国やイスラエルでの研究で、接種完了者の感染率などが極めて低かったと強調。
ただ、政権の方針変更には米国内でも足並みの乱れが見られる。
AP通信のまとめでは、バイデン政権に歩調を合わせるとしたのはバージニアなど18州。
メリーランド州では州政府が着用義務を15日から解除するとした一方、ボルティモア市は維持を表明した。
ロサンゼルス郡も規制を維持する方針だが、ハリウッドやビバリーヒルズでは14日、マスクなしで行き交う人の姿も目についた。
演技指導者の男性 (56) は「今朝、マスクを着けずに犬の散歩に出掛け素晴らしい気分だった。不思議な感覚でもあった」と慣れない様子。
看護師ザラ・クリアさん (51) は「陽性となり、病院に来る人はまだまだいる。年末までは着用を続ける」と警戒感を示した。
ハワイ州ではイゲ知事が13日に「誰が接種し、接種していないか見分けられない。最善の対策は全員が着用することだ」と強調した。
(2021年6月1日号掲載)