2023年1月15日
岸田首相は1月13日、バイデン大統領とホワイトハウスで会談した。
他国領域のミサイル基地などを破壊する反撃能力 (敵基地攻撃能力) 保有決定と防衛予算増額を伝達。
バイデン氏は「歴史的だ」と称賛した。
両首脳は共同声明を発表し、日本の反撃能力を含めた開発と効果的運用での連携強化で一致した。
中国による国際秩序への挑戦を非難。
宇宙や半導体など新興技術分野で日米が優位性を確保していく決意を示した。
日米同盟は歴史的転換への岐路に立った。
米中の覇権争いが激しくなる中、中国が圧力を強める台湾や東・南シナ海で軍事的緊張の高まりが懸念される。
バイデン氏は会談で「日米同盟を現代化する」と言明。
岸田氏は会談後の講演で防衛力強化を「戦後の安全保障政策を大きく転換する決断をした」と強調した。
両首脳は、反撃能力を含む日本の防衛力強化での協力を閣僚に指示した。
攻撃目標の探知に用いる衛星コンステレーション (小型人工衛星群) の構築や、中国が導入を進めている「極超音速兵器」に対応した共同研究などを想定している。
岸田氏は米国製巡航ミサイル「トマホーク」の導入を伝達し、バイデン氏は強く支持した。
共同声明では「インド太平洋は中国による国際秩序と整合しない行動」など増大する挑戦に直面していると指摘。
日米共同で能力を強化し、経済安保も含め国際社会で主導権を確保して、対抗する姿勢を鮮明にした。
中国を念頭に経済的威圧や非市場的政策の脅威に対して、同志国間で強靱なサプライチェーン (供給網) を構築するとした。
台湾海峡の平和と安定維持の重要性を強調し、両岸問題の平和的解決を促すと表明。
両首脳は、人工知能 (AI)、量子、バイオといった先端技術の管理と保全の重要性でも一致した。
ロシアのウクライナ侵攻を「不当かつ残虐な侵略戦争」と非難し、対ロ制裁とウクライナへの支援継続も表明した。
岸田氏が議長を務める5月の先進7か国首脳会議 (G7広島サミット) で、国際秩序を堅持するG7の結束を示すため緊密連携を確認した。
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*パトリック・クローニン氏 (米ハドソン研究所アジア太平洋安全保障部長) の話 :日米共同声明は台湾海峡の平和を維持することが極めて重要だと明確にした。バイデン大統領は台湾が攻撃されたら米国が防衛すると発言しており、日本がその一翼を担うことは明らかだ。防衛費増額や反撃能力 (敵基地攻撃能力) の保有を約束した日本のメッセージは明確で歴史的だ。岸田首相は政治的リスクを受け入れながら、地域の脅威に対する抑止力を維持し、真剣にあらゆる不測の事態に備えようとしている。日本の意思に大きな変化が見られる。
日米同盟は、両国が同じように利益を得る双方向の関係になる。自衛隊が攻撃的になるわけではないが、日本は独自の「矛 (ほこ)」を持つことになり、米軍が「矛」で自衛隊が「盾 (たて)」という役割は変革する。中国や北朝鮮はミサイルを増強し、日本を取り巻く安保環境は悪化している。効果的な日米共同作戦の遂行には人工衛星の利用が不可欠であり、日米宇宙協力協定の署名も行った。
(2023年2月1日号掲載)