2021年6月1日
新型コロナウイルスのワクチンが余る米国を訪れ、接種を受ける外国人旅行客が増えている。
国際的なワクチンの争奪戦に苦しむ自国政府への不信感が背景にあり、受け入れ側の都市は観光業の再建につなげたい考え。
日本人向けツアーで5月中旬に接種した男性は「日本では相当遅れるだろうと思い、仕事への影響も考えると待てなかった」と語った。
接種遅滞への不満が表面化した形で、日本政府は一層の加速を迫られている。
米疾病対策センター (CDC) によると、米国では若年層を中心に接種率が伸び悩み、供給が需要を上回っている。
ワクチンの効果への疑念や感染への危機感の薄さが原因とみられる。
ロイター通信は5月中旬、米国の余剰ワクチンを求める中南米の旅行客が増え、メキシコからの航空運賃が2か月前に比べ3~4割上昇したと報道。
自国で接種が受けられず、医療体制への信頼度も低いためという。
米国で体調不良になるリスクなどを警戒する日本の旅行会社は消極的だが、米側では観光の起爆剤として、ニューヨーク市が5月上旬に旅行客に接種する方針を表明。
アラスカ州でも6月1日から主要空港に到着した全ての旅行客が無料接種を受けられるようになる。
ニューヨークの旅行会社「あっとニューヨーク」は150ドル (約16,000円) で接種会場まで案内し、通訳を担う日本人向けツアーを企画。
今月中旬以降で40~50代の経営者らから300件以上の申し込みがあった。
同社の支援を受け、東京で会社を経営する50代の高津弘さんは5月15日に妻と渡米。
ニューヨークの主要駅の会場で、1回で済むジョンソン・エンド・ジョンソン製の無料接種を受けた。
緊急事態宣言の延長を繰り返す日本政府の対策に計画性を感じられなくなり、会社の取引で海外に行く必要もあった。
帰国後の自主隔離中の高津さんは「将来の見通しが立たないのは仕事で大きなダメージ。
接種できて安心し、有意義だったが、海外にまで行かなければいけないことが悔しい」と話した。
(2021年6月16号掲載)