2023年8月2日
格付け会社フィッチ・レーティングスは、米国の財政悪化を指摘し、米国債の格付けを「トリプル A」から「ダブル A+」に1段階引き下げた。政府の債務は米国に限らず、日本を含む各国で膨らんでいる。
新型コロナウイルス禍の経済対策で支出が増え、インフレを抑えるための利上げにより金利負担も増しているためだ。
国際通貨基金 (IMF) は各国に財政規律の引き締めを求めている。
▽歳出拡大
フィッチは、歳出拡大により米国の財政赤字が今後も拡大すると予測する。
6月に債務上限の停止と合わせて打ち出した歳出削減策の効果は乏しいとし「2024年11月の大統領選までに、これ以上の財政再建策はない」と切り捨てた。
日米など各国で、新型コロナ禍に見舞われた2020年にGDP比で政府債務が膨らんだ。
経済活動の復旧による成長で一旦は低下したが、2023年以降は米連邦準備制度理事会 (FRB) をはじめとする中央銀行の利上げの影響で増加が見込まれる。
IMFの財政報告によると、世界全体の債務のGDP比は2023年の93.3%から2028年には99.6%に拡大する。
米国は122.2%から136.2%と拡大幅が大きい。
世界第2位の経済大国の中国は82.4%から104.9%になる見込み。
▽深刻な日本
より深刻なのは日本だ。
2023年は258.2%で突出。
2028年には264.0%まで増えるとされる。
フィッチは日本国債について、上から6番目の「シングル A」としている。
岸田文雄首相は防衛費や子育て支援策の増額を打ち出してきたが、歳出の裏付けとなる財源については6月に取りまとめた「骨太方針」に盛り込まず先送りした。
次期衆院選を睨 (にら) んで与党内から増税議論への抵抗が強く、債務拡大につながる懸念がある。
日本では日銀の長引く金融緩和策によって金利が低く抑えられ、国債の利払い費も抑制されてきた。
しかし、日銀は7月の金融政策決定会合で、緩和策を修正。
長期金利の上限を事実上1%まで引き上げ、市場で長期国債の金利が上昇した。
物価高が続けば、さらなる緩和見直しにつながり、金利上昇で政府の財政負担が増す可能性がある。
IMF関係者は「財政見直しは日本の方が急を要するのではないか」と指摘した。
(2023年8月16日号掲載)